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[29]赤1(1)・取り憑かれた人達 |
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白の強力ワイン、シャルドネが登場した後は、物議をかもした?ミネラルウォーターで口をゆすぎ、赤へと入っていく。
現在、全ドイツの栽培比率で見ると、赤が30%超の状態だが、フーバー醸造所は70%で、いかに力を注いでいるかがわかる。
それもすべて、シュペートブルクンダー=ピノノワールである。
この葡萄の虜になる人ばかりを見えてきた。
それほど力強くないボディ、
冷涼な気候を好み、栽培の難しさは超一級。
なぜそれほどに、この葡萄に一生を賭けるのだろうか…
とさえ思える。
もっと栽培が容易で、収益も上がり易い葡萄はあると思うのだが、この葡萄造りにはまり込むDNAは、遙か昔から用意されていたのか…
と思えるほどに、人を虜にしていく。
現在のブルゴーニュワイン・フリークしかり、ニューワールドでも次々と発表されるピノの生産者しかり…である。
でも何と言っても、まずはシトー派の僧侶達である。
冷涼な場所での活動が多かったとは言え、必ずいつもピノノワールなのである。
ブルゴーニュから、ドイツのバーデン地方にやって来た彼らはテネンバッハ修道院を建立する。
1285年の事である。
ピノノワールの聖地として発見した!とばかり彼らはここを中心に布教活動を行っていく。
しかし、その修道院より約7kmの場所に、より理想的な赤い土壌を発見する。
彼らは、迷うことなく寄宿舎を建てた。
その場所こそが、現在のフーバー醸造所のある場所。
彼らは常に世界最高のワインを目指した。
テロワールによって独自の風味を得る事も理解し、より良い味・香になれば、更に品質を高める造りをしたに違いない。
品質の高さから遠くバイエルン(現オーストリア)にも輸出するようになっていたのである。
便利さに慣れた現代とは全く違う流通、厳しく困難な輸送をしても価値があり、またそれを求める人(当然ながら王侯貴族)が居た…という事である。
王侯貴族達は、その品質に対し、当然ながら呼び名を与える事になる。
必然的に、
「マルターディンガー」。
それは、マルターディンゲン村で(ピノノワールを使って)造られる当時最高の赤ワイン。
フーバー
マルターディンガー
シュペートブルクンダー
Q.b.A
トロッケン
ブルクンドのピノノワールが、権力の狭間に揺れ動く中、ひたすらに品質だけを求めるマルターディンガー。
国外から見れば、同じ葡萄と同レベルの技術だったとしてもどちらが魅力的だったか?は想像に難くない。
そして、ワガママな王侯貴族達は、本来は地名を表していたこの言葉を葡萄品種名にもしてしまう。
「マルターディンガー」
この名がピノノワールのシノニム(別名)だと知った時、フーバーさんは心に誓う。
「百年後でも構わない。“マルターディンガー”が
葡萄品種名として世界に通用するようにしたい。」
ここにもまた、ピノノワールに取り憑かれた人が居た。
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