[48]セオリー破り part1 強力な刀
ワインの業界では常識がある…例えば、
光り物には赤はダメ、
ナマ魚も難しいし、からすみにも合わない。

赤は、根本的に、肉に合わせるべき存在だからこそ、
それは仕方がない。
また敢えてその禁を犯す必要はなかった。

だけど我々日本人は普通、毎日洋風の肉を食べはしない。
健康的な視野からも魚が食卓に上がってくるのは当然。
それ以上に、我々は、食材の範囲が非常に広い上に、
繊細で高いレベルの味覚を持つ民族なのである。


その突出した能力で、
今までセオリーに合わない…
とされている組合せについて
再考する必要が
生じてきているようだ。

僅かなテロワールの差で
味香バランスが変わるのは
間違いない。
だとすれば、
マルターディンゲンという、
まだ現代ではさほど知名度が
高くない村でピノノワールが
造られているのだから
その味香の差が、旧来のセオリーに合致するかどうか…
を判断する必要があるだろう。

奇しくもワイナート45号では、イワシとアルザスのピノノワールの
マリアージュを説いていた。
懐疑的な思いを抱く方も多いと思う。
ブルゴーニュのピノノワールなら、ハッキリ言って合わないから。

でもそれは、ブルゴーニュのピノだけで考えてしまう旧来の視野。
そして余り追求されてなかった分野でもある。
肉食系の民族が、ニシンを好んで食べないだろう。
それ以上に、赤ワインを飲みながら…なんて
まず行わなかった分野。


フーバーユンゲレーベン




合わせてみて驚き。
今までの概念の再構築を迫られてしまう。
心の中では、“なぜ喧嘩をしないのだ!”…
と今までの学習と経験を肯定したい気持ちがあるのだが、
それに反して、いともたやすく味わいが添い遂げる。

高度で繊細なピノのはずなのに、シンプルに合致する。
この感動。絶妙なシンクロ感。
反論できない領域でのハーモニーが、口中から響いて来る。

フーバーさんのピノ、そして我々日本人の味覚によって、
新しいセオリーが構築されていく事になるのかも知れない。
強力な刀を持って、旧態依然の道場へ
道場破りに行くような気になっている自分に驚いた。

 
[To Be Continued...]

|<<前へ | 次へ>> | 一覧 |



Copyright (C) 2000 Net Contents, Vin LePin Kurashiki S.A.R.L.
  .