[49]セオリー破り part2 格子戸

日本人の食卓に当たり前に上るもので、ワインとの相性が難しいと
痛感させられる物の1つが“海苔”だ。
青臭さ・磯臭さが口の中で暴れ出し、収まりがつかない。

こんな状況になってしまうなら、どちらかを放棄するしかない…。
海苔は好きだし、多くの料理に複合的に登場するから、
仕方無しにワインを諦める。…それが今までの自分の常識だった。
しかし、海苔とも綺麗に調和するのが、フーバーさんのピノノワール。

すっかり諦めていたのに
なぜだ?と、その驚きは
まさに衝撃!!

しかし、自分の中にある、
経験と学習によって
構築したセオリーが崩されていく時、
新しい時代の黎明を感じずには
居られない。

切れ味鋭い刀は、この難儀な敵さえ、
一刀両断、向かう所敵無し。

いやいや、このワインは刀なのか?
敵を求め、調伏していくものなのか?
否!
このワインの求めているのは調和。
それも力で押し切るのでなく、懐深く受け容れ、
優しく包み、深く美しい世界を構築していく。

フーバーユンゲレーベン


それは力での切断などではなく、
時空の中に浮かぶ不思議な世界。
敢えて言うなら格子戸のような存在。

その向こうにある雪景色に目を細めるか。
春爛漫の桜吹雪を楽しむか。
萌える草木の息吹を感じるか。
はたまた、紅葉が風に舞うのを愛でるか。

どこに在っても非の打ち所の無い調和。
この調和を理解できるのは、我々しかいない。
美しさに酔いしれる能力をふんだんに使って楽しめる。
これは、我々日本人だけに許された特権。

我々の持てる能力と食文化を、
引き立たせてくれる格子戸…
それは、禁忌とした旧来世界のセオリーさえ、
受け容れ、輝かせ、お互いを高め合う力を持っているようだ。
 
[To Be Continued...]

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