[55] エレガンスを越えて

U-571という映画を見た。
潜水艦Uボートを、米国の水兵達が強奪し、潜水していく。
潜行深度160mを越え、200mに達した時、チーフがつぶやく。


「なんてタフな船なんだ。
 ドイツ野郎め。船の作り方を知ってやがる…。」

私は敵対こそしないが、ピノノワールは
ブルゴーニュがNo.1だと考えていた。
しかしフーバーさんのワインを飲んだ時、

このチーフと同じような気持ちになった。

味覚は個々の差もあり、潜水深度のように
数値でカウントこそできないが、
エレガンス…いや、それさえ越えた領域で
可憐、繊細かつ清楚に、飲み手に語りかけてくる。

造り手は言った。
タンニンがギチギチとするものでなく
舌の上でワインが踊るようなスタイル…。
飲む度に私は思う。
 武骨で堅物、地味なはずのドイツ人め、
 一体どんな作り方をしたんだ…。
感嘆しながらも味わう私の舌の上で
踊り続ける舞姫の美しさに、時は遡る。

初めて飲んだのが、2000年のユンゲレーベン。
グラスを傾けた一瞬、心は初恋の人の前に運ばれた気分。
心洗われ、最も純真な頃の自分が見えたような気がした。

以来、虜となりながらも、冷徹にテイスティングを重ねてきた。
そして、進化していく姿を心と体に焼き付けた。

今、多くのドイツの造り手達がピノノワール造りに勤しむ。
そして、あちこちで高い評価を得るようになってきた。
しかし、明らかに頭抜けた存在に、私の心は、そして体は、
ここがbPである!と繰り返し、確信する。

「ワイン造りは数百万通りの手法がある。
その中でベストと考えられるものを選んで積み重ねていく。」

もし、繊細な日本人の舌があるならば、
きっとその言葉の意味が、分かるに違いない。
それはもう、エレガンスを越えた、至高の世界。

純粋な心だけが到達できる、唯一無二の存在だから。

  [To Be Continued...]

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