ヴァイルがウチにやって来た [02] スタートライン

「駅まで車で迎えに行きます」と言ったら、店の存在・成り立ちを感じ取れる街を楽しみながら行きたい…とのこと。
そして、特産品を食べ、 自分のワインと合わせてみたいそうだ。

後から聞くと、白壁の街を散策、昼食は“ままかりの酢漬け”を食べたそうである。
どれだけ相手の事を尊重する人物であるかはすぐ分かった。
ナマの小魚、しかも酢…という調味料を理解できる外人さんは珍しいから。

その後、ウチに来るというのだ。

当日は、少し暑かった。
比較的涼しい2006年の西日本だが、当地の5月31日ならば例年並みの気候と言える。

でも冷涼なドイツの人にとっては厳しいだろう。
しかも、きっとスーツを着込んでいるに違いない。
汗を流していたらすぐワインセラーへ案内しよう…
などと思いながら待っていた。

セミナー受講者の中には、少しでも早く見たい…
とセミナールームに入らず、店の入口で待ち受ける人達もいた。


約束の時間まで15分ほどか…
と思っていたら、来た!

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お辞儀…をしてきた!
先に握手の手を出したのではない。
日本の文化をよく研究してらっしゃる。
しかも日本人流?の名刺交換。

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外観は、それらしい顔をしたドイツ人。
厳めしさとシャープさがあるゲルマンの横顔。
つい007の昔の映画に出て来たドイツ人(カッコ良い悪役)を想像してしまった。

しかし尖らない知性と教養、相手を尊重する仕草。

物静かながらも、フレンドリー。
繊細さと奥ゆかしさ…
これは、日本人が容易に理解して、最も好むタイプのドイツ人。

決してお世辞ではない。
嫌みでないインテリジェンスは、実に爽やか。

とりあえずはゴーミヨのヴィルヘルム・ヴァイル氏が巻頭カラーで載っているページにサインを求めた。

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この時、写真の上に大きな文字で書く事を想像していた。
が、極力、印刷にじゃまにならない部分に、調和を考えたような、控えめなサインをした。
この一筆も、彼の性格を如実に表しているように思えた。

調和とエレガンス、造り手の心はそのままワインに映るのだろうか。
そんな気にさせるのが、このリースリングQBA。

              
   
ロバ-ト ヴァイル
   リ-スリング[2005]

   2005年物。充実の内容。

パッと見は、造り手が所有畑全部を適当にブレンドするQBA。
しかし内容は、超優良畑2つの原料だけを使って、なおかつ補糖なし。
つまり中身はカビネット。殆ど畑名付き。

残糖は想像だと30g/Lの中程、ぎりぎりお料理に合わせられる範囲と言えるだろう。

外観の数段上の内容が詰まっている。
それがロバート・ヴァイルのワイン。
そしてこれは、彼が造る作品のスタート・ライン。

彼の思い描く、果てしなき道が始まったに過ぎない事をこの日、知らされることになった。


[To Be Continued...]


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