2007 ヴァン・ド・ペイ・ドック シラー
ポール・マス
Vin de Pays d’Oc Syrah
Paul Mas
倉敷美観地区の入り口にあるフレンチ・レストラン「フテューラ・フルール」。
ここのシェフ、お料理&ワインのマリアージュに殊の外熱心だ。
今日も休憩時間を利用して、湯気の立つ次のランチメニューを御持参下さった。
お料理は、仔羊のロースト ナヴァラン風。
元来この料理は煮込みだが、シェフ自身が
‘焼いた肉が好き’…
ということでアレンジ。仔羊のローストに
ナヴァラン風の蕪(かぶ)のソースを使ったもの。
ローストした肉からは、風味が立ち上がり、
肉汁が湧き出す。
その風味を好き…というのは、
肉好きの私としても非常に良く分かる。
そしてこのソースだ。
ナイフを入れ、口の中に入れると
色んな味わいが現れる。
お約束で選ぶなら、ロワール川流域の赤、
とちらかと言えば、少し軽めに仕上がった
ソミュール・シャンピニーのようなものを
考えるのが妥当なのかも知れない。
しかし、やや悪い年のカベルネフランは、
少し青臭さが出て、バランスが取れるのかも
知れないが、そういった痩せたスタイルは、
ワイン屋とすれば、敬遠してしまうので
該当在庫が無い。
ならば良年のシノン?と思いを巡らせる。
しかし、それだと原価が高くなり、
気軽に楽しんで貰いたい…という
シェフの思いから外れてしまう。
ということで、味わいから頭に浮かんだのが
ラングドック地方の巧者、シラー好きの男、
ポール・マス氏の造るこのワイン。
「シラーは臭いでしょ?」という私の問いに、
それは、造り手が下手だからだ。
心を込めて育て、上手く醸造させれば
心地良い香しかさせない品種だよ!
と、かつて倉敷で会食を共にした時の
彼の言葉が頭を過ぎったから。
グラスに深く濃い色合いの液体を注ぎ、
お肉の後を追いかける。
ペッパーの香ばしさ、美味しい肉汁、
さらにソースの蕪の風味…
覆うように黒系果実、滑らかさとタンニンが
巧みにハーモニーを奏でる。
次々と現れては消える、味の調和に
しばし声を止めながら…ゆっくりと楽しんだ。
少し羊は苦手…というWifeも、
「わぁ~、これは美味しい!」
思わずシェフもにっこり。
お料理を目の前に据え、2000種類のワイン在庫の中からの
最適な選択。
ここまで裏でやってることを、きっとお客様は気付いて下さる。
そして一言、最も期待する言葉を言って下さるはず…
そんな思いを込めてのコラボレーション・チョイス。
12月も楽しんで下さいね。