南仏、ラングドック地方の中でも
最もコスト・パフォーマンスが良い造り手の一人…
ポール・マスが、ウチに来てくれると連絡が入った。
あな嬉しや。
最近、大物がどんどん来てくれるようになった。
ほとんど外に出る事ができない私にとって
これほど嬉しい事はない。
そしてワイン好きとしても
大物であるなしは別にして、
ハートを込めている造り手と会えるのは
この上ない喜びである。
それは、葡萄比率や土壌などの情報以上に
重要な話を聞く事ができるからである。
ましてや、彼は大物、その手によるワインは
ハイコストパフォーマンスで、日常には
十分過ぎる品質。
つい気持ちが前のめりになってしまうのは仕方ない。
造り手の人柄や心に触れられる瞬間は
アイドルに出会うファンの心持ちと似ている…
なんて言うと変だろうか。
でも、私にとってはそうなのである。
遠く離れた地で造られたワインを
幾度となくグラスに注ぎ、眺め、揺らし、
香を嗅ぎ、飲み、味わい、余韻に身を投じながら
液体に込められたものを受け止める努力をする。
それがテロワールの巧みな表現だったり、
造り手の心を込めたメッセージだったり…
時としてパズルのような複雑さを含んでいたり
飲み手に対する謎かけとも言える挑戦だったり…
そんなこともあったように思う。
飲んだワインは整理と記憶、
その中で受けた感銘を書き留め、
あるいは心に焼き付ける…という作業を行う。
それが私の仕事、そして楽しみ。
彼のワインは重くタンニンが十分ながらも滑らか。
キメの細かいタンニンは、お互いが軋み音を
上げるような事がないスムースさを持つ。
レ・ファイス[2004]
ドメーヌ・ポール・マス 750ml
樽は銘柄やグレードなどによって巧みに使い分けられ
オーキーさとトースト香が見え隠れしながら
ワインのボディを支える。
角張った部分がなく、リラックスして飲める…
という基本スタンスは常に不変。
この巧みで隙の無いワインを造る人物とは?
…どんなキャラクターが登場するか、
ついワクワクしてしまうのだった。