彼の銘柄については、すべてのラインナップを
年号を変えるだけでなく、入荷するロット毎に
確認の為に飲んでいる。
そして、それぞれの銘柄のセパージュも覚えているので
予備知識は問題なし。
まずは、来訪前日の、夕食を食べる店から
選定を任される事になった。
本質的な美味しさを持っていること。
できることなら、当地の食材と文化が詰め込まれた店…
という事で、“鮨・東田”を選んだ。
ここの大将には無理が言えるし、
地元素材を生かしたメニュー、
その繊細な技巧、何よりも美味しいものを
食べて欲しい…という姿勢を
私は高く評価しているから。
もちろん、その料理のレベルは高く、
某芸能人御用達だったりもする点も
プラス要因ではある。
約束の8時に行くと、ポール・マスとその一行は
既に来ていた。
遅れた事を詫びながら、名刺を差し出す。
いかにもフランス人…という外観。
ややクール、きっちりとしたビジネス・マン。
情熱は内に秘めていたとしても、
それを外側には出そうとはしないタイプに見えた。
最高のワインを!…とオーラを発しまくる、
情熱的な造り手とは一風違って、
鞘に入ったナイフのような
凄味に似たものを感じた。