06-0731ポール・マス来訪 [11] 市場が創り出すワイン

味良し、価格良しのポール・マスに対して、
私が少々気に入らなかったのは、
土地への愛着が、やや希薄に感じてしまう点である。

トワベー・オーモンについて、特に白は、
AOCなのだからもっと「リムー」を前面に
押し出して欲しいような気がする。

トワーベー・オーモン 白
ジャン・クロード・マス
(ドメーヌ・ポール・マス)

しかし、赤と同様、芸術家ラベルにして、
「III B & Auromon」(トワべー・エ・オーモン)の白
というブランドにしている。

ラベルは美しく、確かに消費者に訴求するものはある。
それ以上に内容が優秀だから、ワイン屋としても
お客に勧めたいと思う。

…ってところで気づいたのだが、
では、「ACリムーを謳うメリットはあるのか?」
という点である。

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リムー?何それ?って消費者ならずとも、
(ワイン屋でさえ)言ってしまいそう。
まして白のみのAOCで、シャルドネが認められている…
なんて小理屈は、買う側としてはどうでも良い。
いや買う側が認知していればメリットがあるけど
浸透していない今、このAOC名を出しても
何のメリットもないのが現実かもしれない。

消費者としては、え~?それどこの国?
って言って終わりのような気もする。

マーケティングのクールな目で見れば、
このAOCは今は使わず、違うイメージを前に出せ…
というのが、現時点での正解なのかも知れない。

そう考えれば、地名を必ず表記せよ!なんて事を、
まだ名が売れてないAOCに強要するのは、当事者でない者の
勝手な思い入れなのかも知れない。

その地で葡萄を、そしてワインを造っている者が
土地を愛していない訳はない。
その気持ちなくして造り続けられるはずはない。

100106_08

その名を名乗れないのは、
流通と市場側にこそ、表記しない原因がある…
と考えた方が自然なようである。

一方、トワべーの赤。
これは、ヴァン・ド・ペイ・ドックでしかない。
有象無象が溢れ返っている中、それだけに、
実力本位で見られるこのカテゴリーは、
圧倒的な品質と、目を引く外観があればOK!
…なのだ。

※画像は別年号の写真を使用しております。
トワーベー・オーモン 赤
ジャン・クロード・マス
(ドメーヌ・ポール・マス)

実際、旨い。
価格をかなり超えた迫力がある。
濃度がある。樽香もある。果実味もある。ボディがある。
アフターがある。好バランスがある。
この価格のワインとして、ちょっと文句はつけ難いワイン。

派手なラベルが、ワイン通にとっても
マイナス要因にならぬワイン。
つまりは、ホンモノと言わねばならぬ内容。
このカテゴリーを創り出したのは、
結局は“市場”そのものなのかも知れない。

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