南仏、ミネルヴォアで品質の高いワインを造る
LTB=ラ・トゥール・ボワゼの
当主ジャン・ルイ・ブドゥ氏が、当店に訪れるという。
一体、なぜこれほど来てくれる?
ウチが有名になったの?
…そんなはずがない事は分かっている。
田舎で、品質だけを考え、
細々とやってるワイン屋である。
おまけに、「余り商売人っぽくない」…と、よく人に言われる。
いや、「お前は絶対にB型だろう!」とか、
「気難しいオヤジだ!」と、近年の評価は悪化するばかりだ。
当の本人の耳に達するほどだから、
巷では数倍もしくは数十倍、言われているのだろう。
品質を最優先に考え、お客の事を懸命に考えて
ワイン屋をやっているのだが、
正直言って腰が低いタイプではない為だろう。
関西の大学に行ったものの、ずっと勤めていたアルバイトで
「おおきに」と卒業するまで言えなかった。
幼い頃から「ありがとうございました」と言い続けて育っており、
この言葉の中に心を込める事はできる。しかし、
「おおきに」という言葉の中に、どうしても
心を込める事ができなかったのだ。
不思議に「Thank You!」という言葉の中には込められるのに…。
バイトで働いていた染め物屋の番頭さんには
「えぇねん。“おおきに”言うたらえぇねん。気楽に行こゃ。」
と言われ続けたものの、やはり言えなかった。
そんな偏屈なのである。
現在のワイン市場を見渡してみると、
最も優先されているのは価格であり、
品質は銘柄で固定されると錯覚している風潮がある。
電化製品ならそうだろうし、同じアルコール飲料でも
ビールなら、ほぼそうだろう。
しかしワインは違う。
本来、大切にしなければならぬのは
「コンディション」だと考えている。
最高のコンディションで提供するには、
ランニングコストが高い設備が必要になる。
従って同じワインでも価格が高くなってしまう場合が多い。
が、品質的には、私が扱う物と同じレベルはあっても
越えるものは日本国内には決して無い…
と言い切れる品質管理を行っている。
それを認めてくれるからこそ、
輸入業者が、蔵元を連れて来るようだ。
飛び抜けた量を売る店は、それはそれで
蔵元達を連れて行く価値はあるだろう。
しかし、造り手とすればどうだろうか。
自分が心血を注いで造ったワインを
ぞんざいな貯蔵をしたり、暑い場所でも空調がなかったり…。
時として、蛍光灯の下にさらしたり強い照明があったり、
クーラーや暖房など人間の生活空間に晒したり…
そんな状態にあるワインを見るのは辛くないだろうか。
一方、販売量は僅かでも、パーフェクトなセラーで
静かに並べられていれば、自分の造ったワインが
いかに可愛がられているか、が分かる。
そして、自分の作品が飲み手を喜ばせるに違いない…と考える。
輸入業者も、そんな、造り手を喜ばせる販売店として
当店を認識しているからこそ、
多くの造り手を連れて来るようだ。
実際、今回の、ジャン・ルイ・ブドゥ氏など
田舎オヤジの人なつっこさを全開、
私のワインの扱いを知って、
感激の余り私に向かって走り寄ってきて抱擁!
ってプロレスラー真っ青のその巨体に吹っ飛ばされそうになった。
(写真がブレてるのはそのせい)。
力強く、濃密なのはワインの造りにも現れている。
葡萄をケチッてない。
ふんだんに費やしている。
コスト的に、この濃度、飲み応えは、
なかなかない、かなりのレベル。
このクラスでは洗練されている印象はそれほど感じないが、
暖かさとぬくもりは、十分過ぎるほど感じた。
南仏の暖かさ、人の優しさを感じさせてくれた造り手。
思い出す度に、楽しさが湧き上がる。
また今日は、パーティー!
ブドゥ氏の笑顔が見えたような気がする。