06-0807ラ・トゥール・ボワゼ来訪 [04] セミ・マセラシオン・カルボニック

ボージョレ・ヌーヴォーの醸造法として有名になった
マセラシオン・カルボニック。
密閉されたタンク内に、炭酸ガスを吹き込み、
醸造を早める方法である。

一方、ラ・トゥール・ボワゼの醸造法は、
“セミ・マセラシオン・カルボニック”(以下SMCと略)と呼ばれる。
しかし、私と同じように言葉で誤解をしてはならない。

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適切な言葉が無いので、この名称を使ってしまい、
理解に混乱がおきるのだろう…と輸入業者も本人も言っている。
彼の言うSMCとは、除硬せず、葡萄の皮とジュースの、
接触(スキンコンタクト)を増やすのが目的。

ぶどうの旨みは皮の周りにあり、
果肉から、皮を通過してジュースが流れ出ることにより
旨みがジュースに入り、これを原料にワインを造る。

一般的醸造法では、除硬を行うので、タンク内で分離し、
上が果帽(皮と種の塊)、下がジュースに分かれてしまう。
それで、ルモンタージュ(下からジュースを取り出し、
上から注入し、果帽を壊し、スキンコンタクトをさせる)が必要となる。

SMCの場合は、茎が残っている為、タンク内は、
葡萄の房がタンクの中の大部分を占め、
茎が隙間を作るので、その間にジュースが入り込み、
より一層のスキンコンタクトができる。

ただし最高の状態の葡萄(茎まで完熟)を使わないと、
えぐみ、渋みを抽出するので、高い品質の葡萄にのみ
許された方法と言えるだろう。

SMCにより、醸造された葡萄は、透明度があり、
果肉から、ゆっくりと皮を通過してジュースが、
皮の旨みを全て、取り込んだことが分かる。

実験的に、全く同じワインで、除硬を100%したものと、
果硬を残した物を、発酵終了時点で、比較試飲すると、
後者の方が、タンニンがまろやかで文句なくレベルが高い、
とブドゥ氏は語った(さすがにエンジニアだ)。

このSMCの手法は、葡萄を動かさずに旨味を
ジュースの中に抽出できるため、原材料へのストレスが少ない。
また、半開放式タンクは、完全密閉もできるので、
醸造の状況により密閉し、炭酸ガスを充填させて酸化を防ぎ、
酸化防止剤の使用を抑えられる。

この自慢の醸造方で仕上げる、ブドゥ氏のトップ・キュヴェが、
“マリー・クロード”(奥さんの名)である。
原料葡萄は、リュット・リゾネ(減農薬栽培)で手塩にかけた
マリエルの最上区画の10ヘクタールから、
グルナッシュ、シラー、カリニャンを1/3づつ使う。


ミネルヴォワ 赤
キュヴェ・マリー・クロード[2002]

収量は35hl/haまで絞り込み、
圧搾も、軽い圧力で出る「初絞り」だけを使う。
そしてSMCにて丹念に仕上げた後、12ヶ月の樽熟成。
新樽比率は20%、2~3年使用樽80%で
すべてフランス産。

収穫量を抑えることによって得られる
濃縮感のある果実味、それにに見合う骨格、
熟成にも十分に耐える仕上がり。

妻=マリー・クロードへの
思いが詰め込まれた一本、
暖かみと繊細さ、果実味と濃縮感に溢れた美しい田舎味。
ゴツい体に抱きしめられたような、安らげる飲み応えだ。

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