06-1128新酒飲み比べ2006 [22] 総括 2006年の新酒は…

同時に飲んだものや、2・3品目ずつ飲んだものなど、
シチュエーションは均一ではなかったが、
とりあえずは、評価のため、取り扱い全銘柄に加え3品目、
合計25品目を飲んでみた。

2006年のフランスの気候は、明らかに2005年より悪い。
しかし不思議にも、ボージョレ・ヌーヴォーについては
昨年よりも今年の方が味香が良く、仕上がりが良い…と判断できる。

決して、大阪商人の挨拶でなく、今年のヌーヴォーは上出来なのだ。
例えは、1番手で飲んだカンソン社。
昨年は水っぽくて薄く、私自身が「イチゴ水!」と感じ、
飲むまでは、今年も品質的に昨年と大差は無いと判断、
よほどの人以外には売らなかった。
(よほど…というのは、何よりも低価格を求めた方に…だと御理解頂きたい)
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しかし、今年飲んでみて、印象が一転。今までカンソン社の中では、
トップ・レベルの仕上がり。
全般的にネゴシアン系については、
どんな手法を使ったかは分からないが、
比較的品質が高く仕上がっているのが実感できた。

一方、ドメーヌ物に関しては、昨年よりは、
ほんの僅かだけパワー・ダウンした印象がある。
昨年2005年を100とするならば、今年は94~98の印象だ。
しかし、それこそが、年号の特徴をきっちりと表現できた事…
と理解したいし、この仕上がりでも文句なく
ネゴシアン系の物より遙かにレベルが高いワインである。

かなり厳しい天候だったと思うが、
ドメーヌ達は、収穫量制限や間引きなどによって、
十分以上に満足のいく結果を創り上げているように思う。

ここ数年、複数を飲んでみて思うのは、
ボージョレ・ヌーヴォーの選び方としては
“ボージョレ(地区)の”、“良い”、“ドメーヌ”を求めよ…
だと思う。

決して黄金の丘で有名なドメーヌではない
ボージョレの、良い、ドメーヌでなければならいない。
この点を間違うと、たとえばP.P.のヌーヴォー…
という事になってしまうのだろう。

ピノ・ノワール葡萄で、しかも黄金の丘というテロワールで
最高のワインを造る能力があったとしても、
ガメィ葡萄で、ボージョレ地区で、良いワインが造れる…
という保証など、どこにもないのだ。
例えボージョレ地区が出身地であっても…である。

突出する才能であるほど、得意分野は限られる事が多いのだろう。
ミッシェル・ロランにカベルネソーヴィニヨンの
コンサルタントを頼む者は居ないのと同じ理由だ。
(引き受けもしないだろうが…)

一方、ボージョレ地区の優良ドメーヌ、そのコンテスト常勝の技が
織りなすヌーヴォーは、既にヌーヴォーの枠を越えた、
新しいカテゴリー。
「ヌーヴォー」という一言で、すべてを片付ける人が経験したレベルで
語れる品質は、既に大きく越えてしまっている。

そしてさらにそこには、日本人の、季節を愛でる感覚、
初物を楽しむ“粋”が存在する。
「ヌーヴォーを買うのは日本人だけ」…と皮肉るフランス人は、
懸命に品質を上げようと努力する自国の造り手の姿が見えていないし、
巡る季節に身を置きながら、より上の味を求める日本人の
味覚を理解していないのでは…。

高品質ヌーヴォーは、ヌーヴォーの優良ドメーヌと、
日本人のコラボレーションにより、未踏の領域に達しようとしているし、
これから先、よりシェアが増えていくのは間違いないだろう。

「ヌーヴォーなんて」と背を向けた時から
その人の出逢うヌーヴォーはそのレベルで終わってしまう。
求めれば、美味への道は、永遠に拓かれ続けていく…
今年も素早く実りを届けてくれた造り手達に感謝を贈りたい!

乾杯!

[The End]

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