早めに来られたフーバー氏をセラーに御案内する。
この日は少し雨模様ということもあったけれど
4月初旬の倉敷として、気温は暑くもなく、寒くもなく…。
12℃に設定したセラーは、やや涼しく感じる。
最近は、ユーロ高・ドル安の傾向から、
今迄は少なかったニューワールドのワインが増え
ワインセラーの中が雑然を通り過ぎて混沌としていた。
しかしフーバーさんが来るという事で懸命に片付けた。
せっかくセラーの中もご覧頂くのなら、
余りに酷い状態では申し訳ない…と連日深夜までかけて…・
それでもってちょっとばかりフーバーさんのワインを
多めに並べたりしてみた。
最初は愛想のつもりだっのだが、
並べてみると壮観で、
強固な城塞ができたような雰囲気になった。
一番上段に特級を並べ、その下に縦一直線にレイアウト…
レゼルヴェ、アルテレーベン、マルターディンガー、ユンゲレーベン
その横にはヴァイサーブルクンダー、グラウアブルクンダー、ミュラートラガウ
と、こんな状態で棚に列んでいる。
これを見たフーバーさん、
「アリガト」と言って私に向かって合掌した。
誰だよ、こんな挨拶を教えたのは…。
でもその仕草は、感謝の心を精一杯表そうとしている
優しい心が見てとれた。
そして、言葉と外見が違っても
一挙に心が近づいてきたように感じられた動作だった。
気がついた時、『フーバー氏』と頭の中に構築していた五房の巨人が、
いつの間にか、肩を抱きたい
『フーバーさん』に変わっていた。