時と空間のファンタジーさえ呼び起こす香を持つ土壌ではあるが、
その硬さは、どう考えても“石”。
決して土ではない。
コンクリートの地面に叩き付けても割れそうにないし、
少々ハンマーで叩いても砕けそうにはない。
その上、この石の土壌の上に表土が30センチしかない…
というのが、『ヴュルデンシュタイン』の特徴である。
当然のことながら、たったこれだけの土で、葡萄の根が
養分を吸い上げる事など不可能である。
質問がすぐに出た。
「こんなに固い岩で、葡萄は根を下ろせるのか?」
フーバーさんは
「葡萄の根は、十分この岩の中に入り込みます。
根を下ろす…というよりも、液体のように浸みて行くのです。」
と答えた。
この固い岩だからこそ、水分を求めて、
より地下深くへと伸ばす必要がある。
その葡萄の生命の息吹が、葡萄の実に現れてくるのだろう。
コート・ド・ボーヌと酷似する地層、白い石灰岩のヘックリンゲン村、
その南にあるマルターディンゲン村は、
南北が逆になるが、コート・ド・ニュィの土壌と酷似する。
大昔の土壌プレートのうねりによるいたずらだろう。
緑線は村境ではなく、大まかにヘックリンゲン村とマルターディンゲン村を分けたもの。
マルターディンゲン村の土壌は、鉄分が多くなるが、
このヴィルデンシュタインはより含有量が高く、
石灰岩でも、見た目にも赤っぽい。
この土壌を好み、最高の力を発揮する葡萄、
それはクロ・ド・ベーズと同じピノ・ノワール。
マルターディンゲン村の他区画には、色んな葡萄を植えているフーバーさんだが、
ヴィルデンシュタインはピノノワールのみ。
しかも25hL/haという信じられない低収量。
ヴィルデンシュタイン [R]レゼルヴェ シュペートブルグンダー QBA トロッケン ベルンハルト・フーバー
彼のどの畑よりも重厚で、力強く、長命に仕上がる、
フラッグ・シップたる風格。
この風味、そしてポテンシャルに感動した私は、
2005年を箱単位で個人買いした。
10年後・20年後・30年後…
そして40年後に飲むつもりなのだ。