フーバーさんの造る赤ワインの、
ベーシック・グレードと言うべき「ユンゲレーベン」。
私は、2000年産の物を飲んで以来、ずっと毎年飲み続けている。
その感想として、まず言えることは、
「確実に毎年良くなっている」
ということ。
これはプロとしての味の判断であり、
決して販売を煽ろうとしてのセールス・トークではない。
だからこそ、色んな場所で
「2000年以降、毎年良くなっている」
…と話している(それ以前は飲んでないので)。
当然、このセミナーの時も言った。
すると、会場に来て居る人から質問が入った。
「私は毎年数ヶ月をドイツで過ごしている。“毎年良くなっている”
と言うけれど、2004年は天候が悪かった年ですよね。
ドレスデンで大雨。ライン・ドナウが洪水だった年です。
葡萄の作柄がその前の年より良くなったとは考え難い。」
こう言われて、深く考えずに居た自分に気づいた。
確かに天候の良否がある。それなのに、なぜ毎年良くなっているのだろう?
良くなっているのだけは、胸を張って言える事実なのだから…。
つまりは、天候を越える何かをやって来た…
という結論に辿り着かざるを得ないのだ。
この質問者の判断は、年の1/3をドイツ周辺で過ごすだけに正しいし、
異常気象が世界規模で広がっているのも事実。
それによって、私のように無頓着な人間でも、
気候に対してより注意を向けるようになっている。
が、報道と現実では微妙なズレがある。
ご質問下さった方が、ドイツ南部~オーストリーに
2004年に起こった洪水の報道を現地で見て、
より印象を強めたのだと思うが、実はそれよりも前の
2000年の方が、かなり厳しい天候だった。
洪水などのニュースネタが無かったし、
ボルドーが最良と主張する影に隠れ、余り知られて居ないが、
最悪に近い年と言って良いほどだった。
フーバー醸造所のあるドイツ南部のヴィンテージ情報を大まかに記すと、
2000年 ××かなり悪い
2001年 ○ 良好
2002年 ○ 良好
2003年 △ 酷暑にて悪い
2004年 × 雨・冷涼で悪い
2005年 ◎ 最良
2006年 ××多雨・不順で悪い
といった具合である。
2000年を起点に飲んで、スタートが悪かったので、
どんどん良くなったと感じた…などと言い訳はしない。
間違いなくフーバー醸造所のユンゲレーベンは、
天候が悪いはずの2000年でも極めて美味しいワインだった。
その後の2001・2002年と良くなったのは
気候のせいとして納得できるとして、
酷暑で難しかった2003年に品質が上がるハズはないのでは…。
それよりも2004年、冷涼で雨が多く、
前2年から品質が右上がりのベクトルのはずがない!
という質問(ではなく、私の配慮不足の言葉への抗議)だった。
でも、間違いなく品質は上がっている、と私は言い続けるしかない。
事実なのだから。
納得しない質問者に向かって、フーバー氏は静かに語り始めた。