10-0125ボルドー物語 [04-1]

シャトー・ムートン・ロートシルト その1
1級を、常に越えるワインを…

100305_45

どんな理由があるにせよ、1855年の格付けで、
2級という屈辱にまみれたシャトー・ムートン。
悔しさにオーナーであるバロンヌ・フィリップはこう言う。

「われ一位たり得ず。
されど二位たることを潔しとせず。
われムートンなり」     …と。

一級だと認められなれなかった。だけど二級なんかじゃぁない。私はムートンだ!

実力も格式もあった。それを1級と評価しないのは、
客観的に見ても評価する側が間違っていたのだ。
事実、格付けを行ったフランス側が心中穏やかではなかったはず。

フランスの財産であり、象徴とも言うべき最高のシャトーを、
ユダヤ人(しかもドイツからイギリスに、そしてフランスに流れて来た)に
金で買い取られた(*198)のだから。

英国ロスチャイルド家が、格付けの2年前にシャトー・ムートンを
買ったのが、そもそもの失敗だった。
セギュール伯爵家が所有したままなら、1855年の格付けで、
きっと1級を与えられたに違いない。

それ以降に買えば、間違いなく1級をゲットできただろうに。
少々金額が高かろうが、それは問題にならない。
なぜなら、シャトー・ムートンが1級になる迄に注ぎ込み続けた
金額の累積は、下手な国の国家予算を遙かに凌いでいるから。

2級に格付けされる前、そして後でも、英国系ロスチャイルド家は、
いろんな手を使って変えようとしたようだ。
金・女・脅し‥考え得るすべての手法はすべて使ったはずだが、
なかなか思い通りにコトは進まなかった。(*199)

バロンヌ・フィリップの悔しさは、容易に察せられる。
1級に格付けされた他のシャトーに勝るとも劣らない
実力・内容を確実に持っている我がムートン…
それなのに2級と評価されてしまったのだから。

彼は、誓う。
ムートンが常に1級と同じワインを作り続けるしかない。
いや、それで1級と認められなかったのだから、
他の1級を、常に越えるワインを生産し続けるしかない。
格付けを行った、プライドだけが高い人間たちを、
品質で屈服させるしかない‥と。

ここから始まった、ロートシルト家、
そしてバロンヌ・フィリップの不断の努力・資金投入が、
1855年の格付けの権威を高めることになるのは
皮肉にも、確かな事だ。

6864g

[To Be Continued…]
—————————————–
(*198)サントリーが、3級のシャトー・ラグランジュを買収した時にも
「黄色い猿にフランスの文化を渡すな!」という声が上がった。
その国の心とも言える存在なので、仕方のない事かも知れない。
(*199)英国系ロスチャイルド家は、裏舞台を得意と
していたのは前にも申し上げた通り。
もしかしたらスパイ映画さながらの手法が、多く用いられたかも…?

6355g3333g3330g4687g