10-0125 ボルドー物語 [04-2]

シャトー・ムートン・ロートシルト その2
求められるのは論理や理屈でなく…

ムートンのオーナー=バロンヌ・フィリップは、
誰が考えても完璧なシャトー・ムートンという珠の、
どこを直し、どこを磨く?…そんな見当さえつかない
品質向上の努力を続けることになる。

19世紀以降、最高がゆえに誰も手をつけなかった
不変のワイン畑の見直しが始まった。
水捌け、葡萄樹の選別、地質の改善さえ断行。
論理や理屈ではなく、より良い結果をもたらす
天才的な閃きと、火のような情熱が求められた。

彼の情熱と努力は、畑や葡萄造りに止まらず、
ワインの製造・流通システムにまで及ぶ。
それまでは、ラフィットやオーブリオンなどの1級でさえ、
出来上がったワインを樽に詰め、
市内の瓶詰め専門業者へ運び、瓶詰めして貰っていた。

わずかでも樽に入ったワインに振動を与えてはダメだと判断し、
慣行を打破、醸造所内での瓶詰めを始めた。
つまりシャトー元詰めにする、という(今では当然の)ことを思い付き、
行ったのは、バロンヌ・フィリップだ。

数年のうちに、
「シャトー元詰めの品質レベルが極めて高い」
と認められると、他の一級である、
ラトゥール、ラフィット、マルゴー、オーブリオンも
後に続いたのである。

つまりは、この時点で既に、他の1級から頭一つ抜け出た品質を
達成できたと言えるだろう。
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[To Be Continued…]
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(*200)「伝統」という言葉で武装し、極めて保守的なのが
フランスのワイン業界。元詰の断行もムートンでなければ、
まず行えなかっただろう。他のシャトーが提唱しても
瓶詰業者達の圧力で潰れたに違いない。

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