10-0125 ボルドー物語 [04-4]

シャトー・ムートン・ロートシルト その4
されどムートンは変わらず。

P1010002sムートンにとって、既に敵は周囲ではなく、
自分自身に他ならなかったのだろう。
誰もが1級の実力以上…と認めざるを得ないこのシャトーを、
第1級に格付けし直すことこそ、本当にワインを愛するフランス人の
使命だったのかも知れない。

そして1973年6月2日、時の農業大臣は、省令にサインした。
その男の名前はジャック・シラク、言うに及ばず後の大統領だ。

1855年のメドック格付けから、実に118年、
壮絶な戦いに勝利したバロンヌ・フィリップは宣言する。

「われ一位たり。かつて二位なりき。されどムートンは変わらず」 …と。

本当は1級だったムートンを2級と評価した方が間違っていた。
その証拠にムートンは変わらないのに、格付を1級に直したではないか…
という意味だろうが、1855年に発した言葉と比較してみると、
わずかに数句の違いしかない。

その数句の違いを口にする為に、
そして、格付である「第2級」を「第1級」にするためだけに、
118年の歳月と、国家予算数個?分と、
最新テクノロジーと、天才的ひらめき、何よりも
絶やさず情熱の炎を注ぎ込んだのだ。

歴史教科書にこそ載らないこのムートンの歩みこそは、
ワイン好きならば心に刻まなければならない、
「歴史的史実」と言って良いだろう。

[To Be Continued…]

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