シャトー・マルゴー その3
ポンパドールに倣って…
ルイ15世の愛人の座をゲットしたデュ・バリ夫人、
彼女が若い肉体と美貌を武器に、宮廷入りする前に
関係した男は数知れない。
警察の調書にさえ、それらしき記述があるのは驚きだ。
「美人で色っぽく、生気あふれて」…までは良いのだが、
「願ったり叶ったりの蓮っ葉女」と記されている。
取調官との何かを感じずには居られまい。
さらに、ルイ15世が腹心達に、彼女の事を
漏らしている言葉が呆れるほどだ。
リシリューに、
「朕はデュ・ヴァリに満悦しておる。この身が
60歳であることを忘れさせてくれる秘法を知り尽くす
フランスでただ一人の女だ」
アヤン公には
「今まで知りもせなんだ全く新しいやり方での快楽をむさぼっておる」
ノアイユ公に
「こんなにも燃え上がる欲情と、とろけるような快感があるとは、
彼女を知るまで思いもしなかった」
…こんな卑猥な言葉を、60歳を越えた爺様に言わせるのだから
よほどの人に違いない。
デュ・バリ夫人とルイ15世の関係は、お互いの
欲望で保たれており、愛は余り存在しなかったのだろう。
しかし、彼女は、心得ていた。
宮廷第一の愛人の座を保つには、それだけでは
ダメなことを知っていた。
そこで貴婦人としての言動や生き方の手本を、
すぺてポンパドールに求める。
ポンパドールが手に入れたものは自分も手に入れ、
ポンパドールが考えた事を自分も行動に移して行く。
そこで当然ながら、シャトー・ラフィット・ロートシルトを飲む事になる。
ラフィットがポンパドールによって愛され、
宮廷にセンセーショナルに登場したのを見て、
当初デュ・バリ夫人もシャトー・ラフィットを愛飲する。
しかし、ラフィットに勝るものを宮廷に紹介する事により、
心の師匠=ポンパドールに並ぶことができると考え始める。
そこで彼女がヴェルサイユに持ち込んだのが、
天下の美酒と誉れ高い「MARGOUZE」(マルゴーズ)。
そう、ボルドーの女王として誰もが知る、偉大かつ深淵な、
シャトー・マルゴー(*202)なのである。
[To Be Continued…]
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(*202)当然ながら1855年の
格付け第1級指定。5大シャ トーの一つ。