シャトー・ラトゥール その1
宮廷で持て囃されぬ者
『ブルゴーニュはワインの王、ボルドーは女王』
というワイン界では常識となっている言葉を聞き、
疑問を抱かれた方も多いのではないだろうか。
深く濃く、力強く感じるボルドーワインに比べ、
個性を持ちながらも適度なボディと鮮やかな色彩のブルゴーニュ。
現代の両者を飲み比べれば、逆に感じて当然だと思う。
しかしながら、ボルドーの最上級のワイン達には、
常に女性がオーバーラップする。
ルイ15世の時代に宮廷で登場していたにもかかわらず、
イメージが重なるのは、能力に優れて美男な王ではなく、
前のストーリー通り、ポンパドール夫人やデュバリ夫人。
だからこそ、ボルドーワインを女王と呼ぶのだろう。
そんな印象のボルドーワインの中で、
極めて異彩を放つシャトーが1つ存在する。
それは、男性の象徴である『塔』を
シンボライズしているから…だけではなく、
その歴史に深く関わるのが
雄々しい男だからかも知れない。
その名は、既にお気付きだと思うが、
シャトー・ラトゥール(塔)。
品質的にはルイ15世の時代から
ラフィットやマルゴー以上だったと思われるが、
宮廷で持て囃されることはなかったようだ。