[56]葡萄の樹3本のオーナー その1

いい加減な商法が氾濫している昨今、

『葡萄の樹3本のオーナーになって下さい。
 そこから穫れた葡萄で造ったワインをあなたにお届けします』…

そう言われて、どうも乗り気になれなかった。
間が空きすぎる事もあり、(6月締切で支払い、翌年晩秋にお届け)
注文した事さえ忘れてしまう。
そして何よりも、私の卑しい心は疑ってしまったのだ。

販売できずに残ったものを、
この企画を組んで売るのでは…と。

フーバー醸造所のワインは、現在、すべて予約完売で、
売れ残りなどはあり得ないのに…。

だから、もしかしたら6本のワインが来たとすれば、
1本あたりが3000円より安くなり、フーバーさんのワインとすれば格安だ。
なら、お買い得じゃないの…ってノリで、
適当に注文を集めれば良いじゃない、と思っていた。

しかし、本当に恥ずかしい…と感じたのは、
より多くの本数のワインを求める、という事が、
質より量を求める発想でしかないと気付いた時。
葡萄を得られる樹は、3本と決まっているのだから。

ワインの本数を増やす事は、品質を求める
造り手が最もしてはならない事だ。
そして私自身が、造り手に対して、
そんな造りをして欲しくはない…
と最も強く感じている事ではないか。
ワインを受け取る側になった時、本質を
見失ってしまった
己の卑しさを恥じた。

フーバーさんのワインに本質を求めるなら、
逆に本数を減す事を望んだ方が、              
実績ではほぼ5本ずつのようです
より美味しさに近づけるのに違いな
と、そんな事を感じながらも、
パンフレットの写真を見て驚いた。
来年手元に届くワイン、それはまさに
「葡萄の樹3本のオーナー」の為に、
特別に摘果・醸造・貯蔵している
ワインなのだ。
本当に、別途に醸造しているのだ。

実は、フィルタリングもほとんど行わない、
一般市場に出すよりは、より生の状態に
近いレベルで造られているのだ。

小型ステンレス・タンクの外側に
ヘレンベルガーホフ(輸入業者)の名が
書き込まれている。

これが、フーバーさんの真心。
ワインの価格を先払いで取り、お届けは
一年半後…というだけに、
(6月締分のお届けが、翌年の秋以降)
彼の誠意は、確かに返ってくるのだ。
醸造所の隅に置かれた、
小さなタンク。
しかし、詰められた思いは
決して小さくない。
それが分かった時、
この和食に最も合う
白の味を思い出し、
つい個人用に
注文してしまった。
黄色で囲んだ畑で造る。左下が醸造所。

ラベルに薄っすらと印刷された
Hのロゴが誇らしげ。

それは1000%を目指す男の誇り。
この畑からの実り、そしてこの小さなステンレス・タンクに詰め込まれた
彼の思いを受け止めるられる…と思えば、
来年の秋が待ち遠しく思えてしようがないのだ。

[To Be Continued...]

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