ヴァイルがウチにやって来た [10] コルクと酵母

セミナーの終盤、質問を受けてくれた。
その受け答えでも、ヴィルヘルム・ヴァイル氏の人柄と人生観が垣間見えたような気がした。

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まず、コルクに対しての質問が上がった。
近年、コルク不良に起因するワイン劣化が増えている。
ヴァイルのワインに関しては今のところ出ていないが、この不良は、私自身も痛切に感じている所である。

蔵元によっては代替栓を模索、スクリュー・キャップやシンセティックコルク、ガラス栓などを実用化している。
ロバート・ヴァイル醸造所はいかがか?
という問いだった。

「コルク以外の栓は考えていない」。

以上終わりである。

あっけないように思えた。
じゃぁ、コルク不良によってワインが劣化したら?
と突っ込みたかったのだが、どうも“考えない”という言葉は単に無為無策を示すのではなく、何かに支えられた深い意味を持つように感じた。


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それは、次に酵母の質問がされた時、分かったような気がした。

天然酵母・人工酵母、どちらをお使いでしょうか?
との質問に、普通の蔵元とは違った答えが返ってきた。

ロバート・ヴァイル醸造所に存在する
「天然酵母を育てて、使っている」。

つまりは、酵母を培養する設備・技術・能力があるという事だ。
きっとS社から技術導入がされているのだろうが、かなり高いレベルのバイオ・テクノロジーをコントロールしている事を臭わせる返答だった。

もし、我々が想像するレベルにまで到達しているとすれば、コルクに付着する雑菌など物の数ではないだろう。
コルクの質感自体は頭抜けて良質とは言えなかったが、有り余る自信を持っているのは分かった。


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コルクには番号が刻印されており、管理されている。


コルク以外の栓を考えていない…というのは、トップランクのテクノロジーで処理されている、という事に支えられているからこそ、の答えだと分かった。

酵母自体、既に、天然と人工の境界線を超越、我々が知らない部分で進化を続けているのだろう。

迷いとか、違う道の選択…といったものは、ヴァイルには無い。
感情的な部分を刺激するような質問にも 短く、ブレのない答えが、冷徹に返ってくる。



ロバート・ヴァイル
 リースリング QBA



その潔さは、すべてに徹底して求めた“最高”に裏付けされている…と感じる事ができた。


[To Be Continued...]


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