哲多ビンヤード Nr.02 哲多ビンヤード A-14 2008 シャルドネ

哲多ビンヤード A-14 2008 シャルドネ
原料ブドウ生産者 (有)哲多ビンヤード
ヤマト葡萄酒株式会社

ネット上では、誇大広告や、
“嘘ではない”(けど真実でも無い)
というスタイルの表現が闊歩している。
だから、哲多ビンヤードの原料葡萄を、
『日本屈指のポテンシャルだ!』
と言えば、百人以上が登場して、指を折って
数えるかも知れない…なんて言い訳を
用意していると思うかも知れない。
しかし、それは違う。

ワイン好きに問いたい。

どんな土壌にシャルドネを植える?
石灰質土壌の上に山土が被っている…
と答えが返れば嬉しいだろう。

そして、標高は?どの程度を望む?200m位?
…この哲多ビンヤードA-14区画は、約400mだ。

日照は?もちろん晴れが続くのが嬉しい。
県北と言えど岡山県、別名『晴れの国』。
多分、日本中の葡萄栽培地のどこよりも、
降水量が少なく、天気の日が多いと言って良いだろう。

そして岡山県は、基本的に、台風の直撃は少ない。
まして県の北寄りである哲多町を台風が襲う事は希だ。

さらに、地形が概ね盆地なので、
強風の直撃から守られるだけでなく、
夏暑く、春秋は温度差が大きくなる。

オマケに、この山の上にある区画には、
霧まで発生し、貴腐菌も発生する。
(実は、次にはセミヨンを栽培し、貴腐を狙っている)

そんな場所…と聞けば、ワイン好きは驚くだろう。
しかも土壌の石灰岩は、一部の層ではなく、
奥底のずっとずっと下までがそうなのだ。

葡萄が、ミネラル分を吸い上げる事ができるだけでなく
もし降雨があっても、水はあっという間に捌けていく。

論理的に、これ以上のテロワールを日本の中で見つけ出すのは難しい…
と言えるほどの内容なのだ。

『日本屈指のポテンシャル』
は誇張などではなく、控え目表現で、私としては、
『日本一!』
と思っている。
(実は、更に+αな要素が存在している…後述!乞う御期待!)

この2008年シャルドネA-14 の味わいは、それを示すに十分…だった。
私は、この味香に感動、
ヴィンヤードの見学に行かねば我慢ならなくなっていた。

———–to be continued…

石原延秋,Senior Wine Adviser,J.S.A
(c) Ishihara Nobuaki,2010

哲多ビンヤード Nr.01 哲多ビンヤード A-14 2008 シャルドネ

哲多ビンヤード A-14 2008 シャルドネ
原料ブドウ生産者 (有)哲多ビンヤード
ヤマト葡萄酒株式会社

ワインの味を利いて欲しい…という依頼が来た。
どんな物かは分からないけど、紹介者が世話になった方だけに、
一丁やってみるか!と引き受けた。

ワインに向き合った時、どこ?
そんなのあったの?
…とつい口から漏れてしまった。

『哲多』というぐらいだから、
哲多町にあるのだろう。
岡山県北にあるにせよ
県民でも、どの範囲を
哲多と言うか?…は
少々困ってしまうような
(と言うと叱られそうだが)
知名度の低さだ。

いっその事、新見ワイナリー
の方が良かったのでは…
と経緯を知らない私は心の中で思った。

抜栓すると、圧着コルク。
無駄なコストをかけないのは良い事だが、
このワインの仕上がり価格からすると、
このコルクでは少々役不足では…
と感じてしまうのは厳しい判断かも知れない。

葡萄の育成収穫までは哲多ヴィンヤード、
醸造やボトリングは大和葡萄酒だから、
後者の考えによってこの栓になったのだろう…。
今後、どうなるか…は興味ある所だ。

さて、これからが本題。
グラスに注ぐと、若いワインだから、緑のトーンを?
と思っていたが、薄い色彩ながら、黄色・黄金系で
緑は余り感じない。

ワインの足はかなり長い。粘性がありとろんとしている。
香は、フルーツ、そしてバターとナッツ。
これは、実に綺麗に、美しく出ている。
空気に触れると一段とツヤが出て来る。
果実系はやや控え目ながら、
それでも柑橘が後から立ってくる。

舌触りは適度に滑らか、温度が上がると
クリーミーでさえある。
酸はそこそこしっかりとあるが、リンゴ酸ではなく、
乳酸系で、複雑でキメ細やかな印象。

表記では13%のアルコールとなっているが、
飲んでみると、多分、それよりは高い!と感じてしまう。
ただ、アルコールの高さは、お料理との相性を考える時
フレキシビリティが増して、より合わせ易くなるので、
この特性は使い方次第だろう。
まして、ガイジンさんなどには、よりウケると推測できる。

造り手の大和葡萄酒は、アルコール度数によって
頭封の色を替えるという。
このワインに使われている青封は14.5%までだそうだが、
本当に14%程度の強さを感じてしまうのは
私だけではないだろう。

樽の貯蔵などは一切感じない、アンウッド状態。
お世辞でなく、このワインに驚いた…というのが本音だ。

大和葡萄酒という技術力も経験もある造り手だからこそ、
この風味に到達できた、という要素は確かに大きい。
でもそれ以上に、原料となった葡萄のポテンシャルの高さを
いやが上にも感じさせられてしまった。

この素材は凄い。
これをもし、より今様風に仕上げられたとすれば…
そう考えると、ダイヤの原石を見ているような気持ちになり、
居ても立ってもいられなくなってきた。

そう、この哲多ビンヤードの葡萄は凄い!
多分、日本屈指のポテンシャルだ!

———–to be continued…

石原延秋,Senior Wine Adviser,J.S.A
(c) Ishihara Nobuaki,2010

仲村わいん工房 訪問記

がんこおやじが招く   仲村わいん工房 訪問記

nakamura00 01.【仲村わいん工房訪問記】ロックの神のお導き…
02.【仲村わいん工房訪問記】ロックの神の啓示なのか…
03.【仲村わいん工房訪問記】「フルボディ」と言い切れる快感
04.【仲村わいん工房訪問記】もしかしたら…高いの?
05.【仲村わいん工房訪問記】再圧縮の心へ焼き印
06.【仲村わいん工房訪問記】私を先に導くストーリー
07.【仲村わいん工房訪問記】ホンモノは心に響く
08.【仲村わいん工房訪問記】天王寺から上ノ太子へ
09.【仲村わいん工房訪問記】アイデンティティーが覆された
10.【仲村わいん工房訪問記】たった9年で…
11.【仲村わいん工房訪問記】がんこおやじ
12.【仲村わいん工房訪問記】ミツオレッド
13.【仲村わいん工房訪問記】花ぶるいと間引き
14.【仲村わいん工房訪問記】秘められた思い
15.【仲村わいん工房訪問記】この設備
16.【仲村わいん工房訪問記】さちこ
17.【仲村わいん工房訪問記】メルロー 2004年
18.【仲村わいん工房訪問記】ブショネも神のお導き…
19.【仲村わいん工房訪問記】カベルネソーヴィニヨン 2004
20.【仲村わいん工房訪問記】メルロー 2001 粒間引き[1]
21.【仲村わいん工房訪問記】メルロー 2001 粒間引き[2]
22.【仲村わいん工房訪問記】メルロー 2001 粒間引き[3]

以降、続刊

メルロー 2001 粒間引き[1]【仲村わいん工房】

Non がんこおやじの 手造りわいん
仲村わいん工房
Part20

nakamura50どうもイカんぞ。酔うと手ぶれがスゴい。
写真は小さくして、ごまかすしかないですねぇ。
本人はマトモなつもりなのですが、手先が震えるのかな?
ってことで、味利きの方は、酔えば酔うほどノってきて
佳境へと突入。

merlot2001この日の主役 メルロー2001年。
ただそれだけを記した無愛想な外観。
しかし、内容は飲んだ者だけが知り得る世界。

現二さんが、まだ経験も浅かった頃。
何をしたら良いか…懸命に模索をしていた。

デラウエアばかりの周囲の畑の中、
植えたメルローが十分に力を発揮し始めたこの年、
特に天候が良く、難しい間引きも、思い通り行えた。

素晴らしい収穫を目の前に、思いついたのは、
究極の原材料を得ること。
半分以上捨てたその収穫を冷蔵庫に持ち込み、
ダウンジャケットを3枚着込み、一粒一粒を選り分けた。
まだ若かったからこそできた…
というその作業は、我慢の上の我慢。
誰にも求められた作業ではないだけに、
「もぅ、えぇのと違う?これで止めようよ」
という誘惑の下で、黙々と続けられた。

ドイツで言うならベーレンアウスレーゼ。
珠玉の葡萄を仕込んだワインだ。
こんな手法を思ったとしても普通の人は実践しない。
それが理想の方法だったとしても…。

恐るべき品質への執念。
だからこそ、この領域に到達できたのだろう。

「がんこおやじ」とは父=光夫さんのことだと言う。
しかしその現二さんのことを「へんこ」(頑なな変わり者)と妻のさちこさんは言う。

傍から見てると、十分「がんこおやじ」。
でも先代も二代目も、求めていたのは、
飲み手のたった一言に違いない。

だからグラスに注いで香り、味わい、飲み干して言う。
「おいしい!」
…と。

[To Be Continued…]

カベルネソーヴィニヨン 2004【仲村わいん工房】

Non がんこおやじの手造りわいん
仲村わいん工房
Part19

nakamuraCabe1次はカベルネの2004年。
当然ながらノンフィルター。
昨日の抜栓ということで、よりパワーを発揮してます。

外観は黒っぽい赤。縁に熟成色は表れていません。
濃度があることを主張する外観です。

香は豊かで、黒系の果実にヨード、下草、
エステル系の香気成分もあります。
ほんの僅かだけ草と獣、でも程良いバランス。
余韻の中に塩キャラメル。

舌触り滑らかだけどふくよかで力強い。
タンニンは多く密度感があり、ボディも十分にフル。
後味豊かで余韻はかなり長い。

樽っぽい風味を感じるのだが、樽は使ってない。
カカオやビターチョコレートのニュアンス。

nakamuraCabe2一緒に飲んだ2004年メルローと充分に
双璧を為せるだけの内容。
2004年はスゴく良い年で、看板の
メルローが売り切れてるなら、
これで楽しんでおけば良いでしょう。

いや、こちらの方が好き…という人も、
きっと居ると思える力強さと美味しさ。

この年がいかに素晴らしい収穫を
仲村わいん工房にもたらしたか…が
理解できる仕上がりでした。

[To Be Continued…]

ブショネも神のお導き…【仲村わいん工房】

Non がんこおやじの 手造りわいん
仲村わいん工房
Part18

仲村ワイン21感動的なメルロー2004年。
しかし翌2005年も、さらに翌々年も、
葡萄の作柄が芳しくなく、仲村さんは、
看板ともなるべきメルローを、どう造るか…
と、悩んだとのこと。

スケールダウンして、スリムになっても、
2005年として造り、ヴィンテージを謳うか、
それとも年号を越えたブレンドを敢行して、
2004年に近い味香に仕上げるか…
迷いに迷って、お客さんに判断を任せた。
我が道進みながらも、お客様本位…
これが大阪人のえぇトコロ。

お客さんは、年号表示が無くなっても、できるだけ味が変わらない事を望んだ…とのこと。
そこで、2005・2006・2007をブレンドして、
ノン・ヴィンテージの大阪メルローが出来上がったのです。

という事で、ノンヴィンテージとなった新しいメルローも出してくれていたので、
2004年と比較してみようと飲みました。
が、すぐに感じてしまった「ブショネ」。

さぁ、これはどうしよう。
言うか、言うまいか…。
知らんぷりして、飲んで帰るのも手ではあるが…。
横のソムリエールの顔を見ると、やはり同じジレンマに陥っている。

だって作者を目の前にしてるんだから
そのワインを吐き出すのさえハバカられるのに…
でも、ウソを言うのは、このワインに対し、そして作者に対しても失礼過ぎます。

逡巡の後、覚悟を決め、言う事にしました。
ソムリエールも、「言った方が良い」という動作をしたので、
ブショネであることを告げました。
そして、できれば、同じ銘柄はここにないか…
あれば、飲みたい…と申し出たのですが、この場にはありませんでした。

そこで私は、仕入れて飲んでみる事にしました。
これだけ素晴らしい2004年メルローを飲まされ、
それに近い味をブレンドで仕上げたというノンヴィンテージのメルロー。
仕入れない訳にはいきませんから。

しかし、後日、時間をかけて飲む事によって、
私にまた、ロックの神が降りて来る事になりました。

このブショネは、彼の仕組んだいたずらだったのかも知れない…
と今は感じています。

[To Be Continued…]

メルロー2004年【仲村わいん工房】

Non がんこおやじの 手造りわいん
仲村わいん工房
Part17

6693_まずは、ここへ導いてくれた
「がんこおやじの手造りわいん」からスタート。
言うまでもありません。素晴らしい出来。
このレポートは後へ譲る事とします。

次は、仲村さん自慢のメルロー2004年。

この年は、極めてデキが良く、初めて年号表示をしたとのこと。
その言葉通り、驚かされる仕上がり。
適度に熟して来て、エステル系の要素も加わり、
圧倒的な品質。

一部ブログで、このメルローの仕上がりに
疑問を抱く書き込みがあったので
少し身構えて臨んだ…というのが本音。
「がんこおやじの手造りわいん」
が余りに素晴らしいから、その上のグレードとしての存在感が薄くなったのでは、
とも推測しましたが、それは杞憂となりました。

このワインを悪く言うのは、売り手の管理がズサンでコンディションが悪いか、
飲み方の設定や、味利き能力が無いかのいずれか…と断じて良い品質。

アロマとブーケ、果実味の下から湧き上がるカカオやタバコ、
エステル、プラム、干しイチジク…
ボディは膨らみ丸く、力強い。
伸びていく余韻は実に心地良い。
見事な仕上がりのワインです。

恐るべし2004年メルロー。
しかし、もう在庫がない…とうのが悲しいですね。

[To Be Continued…]

さちこ【仲村わいん工房】

Non がんこおやじの手造りワイン
仲村わいん工房
Part16

仲村ワイン20さてここからは、醸造所近くにある
ご実家にお邪魔して
テイスティングとなりました。

ずらっと並べられたワインは、赤。
これは常温に置かれていたので、
スタートは、冷蔵庫から出してきた白の
「手造りわいん さちこ」
となりました。

三ッ辻畑から、八丁橋畑へ向かう途中、
現二さんに聞かれた事を思い出しました。

「メルシャンの“きいろ香”をどう思う?」

私は、「面白いけど、あそこまで技術を投入しないと
香が出ないのは甲州という葡萄の弱点かも…
そして、締まりというか渋みが最後に来るのは
白ワインとして万人に受け容れられるかどうか…」
と答えました。

「手造りわいんさちこ」は、甲州60%、デラウェア30%、
リースリング10%のブレンド。
立ち上がりは、デラウェアの甘い香が漂います。
風味良く、残糖さえ感じてしまいそうですが、
残糖はほとんど無い…とのこと。

旨味多くボディもしっかりとしてきて、
何よりも“きいろ香”と似た、締まり・渋さ・が
最後の部分に現れ、きっちりとまとめます。

あぁ、この味構成だから、きいろ香の味を私に問うたんだな…
と思いました。
ただ、甲州だけで仕上げる気品の“きいろ香”と違い、
暖かみと優しさ、それでいてキッチリとしている
実利的なアプローチで迫ってくるのが分かります。

これ、おいしい!
傍らでソムリエールが騒いでます。
もっと気の利いたコメントは無いんかい…

甲州主体でも、これは大阪風。
旨さに迫る道筋が違って感じる個性派。
でも、美味という本質へ至るのは同じなのです。

[To Be Continued…]

この設備【仲村わいん工房】

Non がんこおやじの手造りワイン
仲村わいん工房
Part15

仲村ワイン05醸造所は、古い土蔵造りの民家。
壁の塗り方から推測するに、おそらく
第二次世界大戦前に建てられた物。
周囲には葡萄が繁り、独特の雰囲気。
中に入ると、土蔵造りゆえのひんやり感が。

タンクのまま貯蔵されているワインも各種。
瓶詰めされたワインもいくつもありました。

どこかで修行されたんですか?
と聞くと、ほとんど父親に教わった以外は、
独学だとか。

仲村ワイン19ただ、休止していたワイン造りを再び
立ち上げる時には、大和葡萄酒の先代に
ずいぶん助けて貰った…と仰ってました。

どうやって造るか、何か秘術があるか?
と現二さんに詰め寄ってみたのですが、
全然特殊な事はないし、
特別な事もやってない。
祖父・父がやってた事を引き継いだだけ…
だとか。

仲村ワイン16このハンド・メイドの搾汁機も
スゴい出来映えです。
南大阪は工作機械などを
多く作ってきた土地柄ですから、
図面無しで何でもできてしまう…。

嫁さんのお父さんに、こんなん作って…
って言ったら、これが仕上がりましてん。

搾る効率が悪い分、得られる液体は、
まさに一番搾り。
この滴りから作られるからこそ、
「がんこおやじ」なのでしょう。

[To Be Continued…]

秘められた思い【仲村わいん工房】

Non がんこおやじの手造りワイン
仲村わいん工房
Part14

仲村ワイン009

山の傾斜から平地に下り、
次に到着したのが八丁橋。
ここには甲州が植えられています。

この畑に来る途中、白ワインの話になりました。
関東に向け、山梨を越えて甲州葡萄で
造ったワインを売るのは少し恥ずかしい。

そんな気持ちがあるから、デラウエアは
ずっと造り続けるし、この八丁橋にも、
実はセミヨンを植えていた…とのこと。
でも7年頑張ったけど、葉が弱くて失敗だった。

仲村ワイン15

そして、この後に連れて行って下さったのが、
4つめの畑=小芝です。

ここには、なんと北方系の品種である
リースリングが植えられています。
この地とすれば、驚愕の選択…と言わねばなりません。

近寄ってじっと見てみると、小粒なその表面に
品種名のもととなったルス(すすの意味)の
黒い斑点が見えます。

主力の白のブレンドワイン「さちこ」は、
これらで構成されているのが興味深いです。
甲州(八丁畑)60%
デラウェア(三ッ辻)30%
リースリング(小芝)10%
というセパージュ。

秘められた思いがグラスから香ってくるような
巧みな構成の白ワインです。

[To Be Continued…]