08-0831 熟成ドイツワイン[06]5番手はグンターロッホ96年、ヘッセンの雄

これまでに記したような、コルク上面の状態がある。
比較してみると面白いので、以下写真を並べた。
これがほぼ同じ十数年を経た状態とは思えないだろうが…。

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かびがびっしり覆う かびが僅かにある 濡れている ドライで汚れなし

温度12℃、湿度70%で均一に貯蔵した結果でも
このようにコルク上面は違ってくるのである。
もちろん、蔵元から出荷港、そして日本への運搬、
さらに定温倉庫、そして当店への搬入まで
完璧なコンディション下に置いているという大前提の下である。

ワインの価格を下げたければ、それらのルートの一部もしくは全部を
ドライ状態にすればコストダウンが図れる。
(’80年代中頃迄そうだったし、現在も個人的輸送はドライしか選べない)
運送によるワイン外観の差は見分けにくく、私たちプロの目で見ても
実質とは逆に思える場合さえある。
だからこそ売る側の姿勢によって選ぶ道は決まってくる。

温度の状態をグラフで見れば一目瞭然なのだが、
右側の振幅の少ないのがセラー内温度。
そして激しく上下する左側の折れ線が、我々の生活環境温度(3月頃の西日本)なのだ。
赤道の下を2度くぐれば、この振幅は優に2倍にはなるだろう。

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灼熱の戦場をくぐり抜けさせるか、それとも
Vip待遇で冷蔵設備の下ゆったりと渡航させるか…
そしてその後も、普通の倉庫に置くか、それとも
適切な保存環境下に置くか…

価格に左右されてしまいがちなワイン選びだが
この重要な部分に、目を背けて語る事は無意味だという事を
是非とも認識していただきたい。

実際、ワインの味が落ち着かないような状態の、
到着したててでは分かり難いかも知れない(特に慣れてない人には)。
けれども、セラーでじっくりと寝かせると、明らかになる。
セラーが普及した現在、手元に置いておけばそれは
明確になっていく。

検討を重ねたルートも、貯蔵も、自信があるからこそ、
10数年を越えたワインの栓を抜いて確かめ、
さらに口を開けた状態で、どこまで保つか…と検討ができる。
(ぞんざいな部分があれば怖くてできないだろう)

そして飲む度に、造り手への敬意を新たにする。
ここまでしっかりしているのか…
と感動を持って楽しめるからだ。

次のテイスティングは、
(10)ヤンパブティスト
リースリング カビネット [1996] グンターロッホ

かつて、ラインヘッセン地方を低く見ていた私は
ケラー醸造所の登場で思考の再構築を迫られた。
そしてこのグンターロッホ。
ラインヘッセン地方のケラーとはまた違った強力な柱が
立っている事を知らされた造り手だ。

ゴーミヨの評価は4つ房、全ドイツ中でもトップ級の認識。
実際、並の品質では十年超は乗り切れないのはご想像通り。

畑面積は14haと狭く、リースリング主体で栽培。
土壌は赤色スレート土壌、これによってリースリングが
モーゼルとは違った厚みと滑らかさを得る。
収穫量も50hL/haに絞り込んでおり、
ラインヘッセン地方ではケラーに次いで注目すべき存在と私は認識している。

外観は極めて濃い黄金色、
ちょっと濃いか?…と思ったが、輝きも透明感もある。
香は極めて美しく立ち上がり、良い熟成を得ている。
舌触り滑らかでツヤのある舌触り、
酸味は、貯蔵が一定だったからか、しっかりとして若々しい状態。
何よりも、こんな熟成が完了した状態のワインは入手が難しいだろう。

10℃付近から、ゆっくりと空気に触れさせていけば、
時の流れに身を委ねながら、心は過去へと遡る…
そんなタイムトリップ感覚を楽しめそう。
やや甘口だが酸のイキが良いので、旨味ある和食なら合わせられる。

[To Be Continued…]

08-0829ベルンハルト・フーバー来訪記念[38]見えない努力をする人~収穫量(1)

フーバーさんの造る赤ワインの、
ベーシック・グレードと言うべき「ユンゲレーベン」。
私は、2000年産の物を飲んで以来、ずっと毎年飲み続けている。

その感想として、まず言えることは、

「確実に毎年良くなっている」

ということ。
これはプロとしての味の判断であり、
決して販売を煽ろうとしてのセールス・トークではない。

だからこそ、色んな場所で
「2000年以降、毎年良くなっている」
…と話している(それ以前は飲んでないので)。

当然、このセミナーの時も言った。
すると、会場に来て居る人から質問が入った。

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「私は毎年数ヶ月をドイツで過ごしている。“毎年良くなっている”
と言うけれど、2004年は天候が悪かった年ですよね。
ドレスデンで大雨。ライン・ドナウが洪水だった年です。
葡萄の作柄がその前の年より良くなったとは考え難い。」

こう言われて、深く考えずに居た自分に気づいた。
確かに天候の良否がある。それなのに、なぜ毎年良くなっているのだろう?
良くなっているのだけは、胸を張って言える事実なのだから…。

つまりは、天候を越える何かをやって来た…
という結論に辿り着かざるを得ないのだ。

この質問者の判断は、年の1/3をドイツ周辺で過ごすだけに正しいし、
異常気象が世界規模で広がっているのも事実。
それによって、私のように無頓着な人間でも、
気候に対してより注意を向けるようになっている。

が、報道と現実では微妙なズレがある。
ご質問下さった方が、ドイツ南部~オーストリーに
2004年に起こった洪水の報道を現地で見て、
より印象を強めたのだと思うが、実はそれよりも前の
2000年の方が、かなり厳しい天候だった。
洪水などのニュースネタが無かったし、
ボルドーが最良と主張する影に隠れ、余り知られて居ないが、
最悪に近い年と言って良いほどだった。

フーバー醸造所のあるドイツ南部のヴィンテージ情報を大まかに記すと、

2000年 ××かなり悪い
2001年 ○ 良好
2002年 ○ 良好
2003年 △ 酷暑にて悪い
2004年 × 雨・冷涼で悪い
2005年 ◎ 最良
2006年 ××多雨・不順で悪い

といった具合である。
2000年を起点に飲んで、スタートが悪かったので、
どんどん良くなったと感じた…などと言い訳はしない。
間違いなくフーバー醸造所のユンゲレーベンは、
天候が悪いはずの2000年でも極めて美味しいワインだった。

その後の2001・2002年と良くなったのは
気候のせいとして納得できるとして、
酷暑で難しかった2003年に品質が上がるハズはないのでは…。
それよりも2004年、冷涼で雨が多く、
前2年から品質が右上がりのベクトルのはずがない!
という質問(ではなく、私の配慮不足の言葉への抗議)だった。

でも、間違いなく品質は上がっている、と私は言い続けるしかない。
事実なのだから。

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納得しない質問者に向かって、フーバー氏は静かに語り始めた。

[To Be Continued…]

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08-0826ベルンハルト・フーバー来訪記念[37]見えない努力をする人~コルク(3)

コルクは、とにかくベストを使う。
質が極めて大切。気泡の入り方が良い状態のもの。
それがフーバー醸造所のコルクの選び方…と分かった。

「最近は、コルクの入手が難しくなっている」
と言う醸造家も居るが、事実なのか?
という問いには、そんな事はない。
需要が大きく値上がりしているのは事実だが、
コストを覚悟すれば、調達に問題はない…とのこと。

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結局、この言葉は、これまでの価格では買えない…
という事のようであり、
不良が出た時に、コルクのせいにするような造り手の
言い訳…と考えるのが妥当なようだ。

コルクが話題になったので、続けて質問が出た。
焼き印は、フーバー家の家紋?
…というものだ。返答は、

フーバー家は農民なので、家族のワッペンはなかった。
そこで醸造所設立時にフーバーさん自身が造ったそうだ。
格子模様は700年前のテネンバッハ教会のマーク。
テネンバッハの「T」をもじって、フーバーの「H」を入れた。
そして葡萄栽培の道具である鎌をそこに記した。

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彼の誇りがそのまま、このコルクに込められているのだ。
丹精込めて育てた葡萄を完成品のワインに仕上げ、
そして瓶に詰め、最後に打つ、このコルク。

いい加減な造り手、そして時の向こうまで見ようとしない造り手なら、
ついないがしろにしてしまいそうなこのパーツこそ、
実はワインにとって最も重要な要素の一つに違いない。
だからこそ、ベストを使う。

30年以上貯蔵するなら迷わずボルドーのワイン…と考えていた私だが、
今回、それ以上に信頼できる存在が出現したのを実感している。
彼のワインを私は、人生の伴としたい…と思い箱買いした。

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ヴィルデンシュタイン[R](レゼルヴェ) シュペートブルグンダー QBA トロッケン

10年後、20年後、そして30年後…と、
当店に来てくれた事を思い出しながら、
人生の節目に、一本づつ飲んでいきたい…
と思っているのだ。

[To Be Continued…]

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08-0824 熟成ドイツワイン[05]4番手はタニッシュ96年、そしてコルク上面の多様性。

コルクは化学製品ではなく、自然の産物から得られるので
質・特性が厳密には不均一である。
人間の指紋のように全く同じ物はあり得ない。
だから、頭封を解いたコルクの上の状態が
全く同じにはならない。

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カビがなくて少しドライな感じの場合がある。
これの場合は、どちらかと言えば、コルクの密度が高く、
ワインの息が少なめだったのだろう。
さほど何もなかったように乾いた上面。
カビもほとんど無い…という場合もある。

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カビが少ない場合も、カビがほとんど無い場合も、
それだけで、貯蔵が悪い…と判断しないで頂きたい。
間違いのない、パーフェクトな貯蔵を、しかも均一に行った場合でも
個々の差があるのを、
私自身が日常的に経験しているから。

そして、コルク上に何のカビもなかった、このワインも、
全く健全で、良い状態であった事をお伝えしておく。

(1)ベルンカステラー バートスチューベ
リースリング カビネット
[1996]ドクター・タニッシュ
ドクター・タニッシュが2つに分家した後の作品、
概ねこちらを本流と認識したような気がするが、
品質的に甲乙つけがたし…という状況だった。

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バートステューベは集合畑だが、それに含まれる単一畑
Lay ,Matheisbildchen,Bratenhofchen,Graben,(Doctor)
は、どれも超一流レベルで、素材の良さは文句なし。

グラスに注げば、この色の濃さは、ほぼ限界と思えるほど。
モーゼルのリースリング・カビネットでここまで深く濃い黄金色は
私自身も経験がないほどだ。
しかし、クリアーな上に輝きもあり、何よりも微弱発泡がある…
(10年経ったものとしてはアンビリーバボー!)
生き生きとしているのだ。
まるで、廃墟と信じていた建物の中に、可憐に咲く花を見つけたような、
そしてよく見ると、一輪でなく溢れるほど咲いていた…というような気分。

香は、グレープフルーツ、八朔などの柑橘系に加え、
若々しさの象徴とも言える青リンゴ、そして蜂蜜。
古典的リースリングのゴム、今回の他のワインでは少なかったオークの香。
そしてお約束の杉に濡れた熟成香。

ミネラル分は、塩味のようにさえ感じさせてくれ、
繊細で微妙な酸は、生き生きとして語りかけてくる。
外観の深い黄金色に反して、内容は極めて若々しい風味。
甘さは、ほのか~やや甘口の間、これならお料理と合わせる事も可能。

このワインの生命力を検証する為、今回は一段と厳しい実験を行った。
深夜から飲み始めて、65%程度残したまま、
コルクを逆さまに突っ込んで常温に放置。翌朝、冷蔵庫に入れた。
その次の夜、飲んでみたが、全く問題ない。
さらに冷蔵庫に入れて3日目、コルクを抜いたら、微弱発泡のガスが滞留し、
ポンッという音がした。
風味は、よりグレープフルーツ、ブンタンのような柑橘が際立つ。
フルーツサラダにも合わせたい…と想像を掻き立てる実力を持つ。

より色が深かったので、もしかしたら、酒質が弱っているのか…
という恐れもあったので、わざと残しながら、7日目。
十分アライブ!
優良ドイツワインの生命力の強さを
改めて知らされた一本だ。

[To Be Continued…]

08-0815ベルンハルト・フーバー来訪記念[36]見えない努力をする人~コルク(2)

フーバーさんは語った。

「現在、コルクは代替品も含めて、色んなものが出回り始めた。
人造コルク、スクリューキャップや、ガラス栓もポピュラーになってきたが、
自分のワインの特性にはふさわしくないので、
現在は、天然コルク以外は考えていない。」

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人造コルクは、瓶がそのまま使えるという利点があるものの、
長期の貯蔵には良くない…というデータが出たようだ。
ガイセンハイム大学からの報告では
シンセティック・コルクは15ヶ月で細かいヒビが徐々に入り、
時間と共に、多くの空気が流れるようになる可能性が指摘された。

ガラス栓も、長期貯蔵時の熟成については
データが揃っておらず、今のところ、
フーバーさんは自分のワインには使う気はないと断言。

スクリューは安全性が高いが、すべての研究成果が
まだ揃ってないので、やはり今のところは、使えない…
という見解。
しかしながら、良い結果が出れば、
「使う覚悟はある」とも明言。

コルク以外で、この完全主義者の目に叶うのが、
スクリューというのが、少し奇異にも思えたが、
ワインの熟成…という点だけを考えれば、正しいのだろう。

さて、天然コルクなのだが、一口にいっても価格は様々。
最も安いものは15~20セント(25円~33円程)で入手できるそうだ。
フーバー醸造所では徹底的にに良いコルクを使うようにしており、
具体的にはポルトガル製だそうである。
そしてそれぞれのコストが、

ユンゲレーベン    83円
マルターディンガー 100円
アルテレーベン   150円
レゼルヴェ     200円

のものを使っているのだ。

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レゼルヴェに超高品質の54ミリのコルクを打ち込むことは
自分自身の哲学的な事であり、
「理解してくれて嬉しい」…と語った。

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ただ、コルクの請求書が家に来た時は、いつもは優しい奥さんが、
ムッとした顔になるのだけが辛いそうだ。

こんなにもコストをかけていることに驚いたのだが、
それ以上に、問わなければ黙っていた事の方が驚きだった。

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マルターディンガー・ビーネンベルク [R](レゼルヴェ) シュペートブルクンダー

54mmのコルクが使われている

やるべき事は150%やっている。
なのにおくびにも出さない。
そんな積み重ねが今のフーバー醸造所の品質を創っているのだな…
と理解した。

[To Be Continued…]

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08-0815 熟成ドイツワイン[04]3番手は1994年もの、コルク上面に濡れ

コルク上面が濡れている事がある。
1994年、14年を経たワインでも…だ。
これは当店のセラーだけが持つ特質かも知れないが、
状況を説明する必要がある。

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この濡れは、外部からのものではなく、内部の液体のごく一部が
湧き出たものだと判断できる。
不思議なのは乾いていない…という事だ。
ワインセラーの湿度は高く70~80%程度だが、
いくら何でもちょっとだけ濡れたコルクが、
ずっと濡れたままであるとは考えられない。

と言うことは、ずっと内部のワインが湧き出し続けた…と考えられる。

ならば、液面がズン…と下がるか、と言えばそうではない。
14年を経たワインの液面としては正常以上に高い液面だ。

ある意味、不思議な状態と言えるコルク上面の濡れ…
なのだが、実存するのだ。
このワインに限らず、これまで例えば
JJプリュムの1990年代半ばでは良く見られた現象だ。
コルクのスタイルなのだろうが、液面が異様に下がってないとすれば、
このコルク上面の濡れも、不良とは言えない。
実際、この濡れ方で、液面が必要以上に下がったワインは
不思議にも皆無…と言えば驚くかも知れないが、事実だ。

なぜなのだろう…と思ったが、すべてのワインの頭封を捲って見る訳にもいかず、
問題が出ないので良いか…と判断する事にしている。

また、この銘柄・年号のこのワインも、すべてがこうではない…
とだけ申し上げておく。

(7)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング シュペートレーゼ
[1994]シュロス・ザールシュタイン
このワインは、一つ前に飲んだ1996年より2歳年寄りだ。
年号を変えて、同じワインを飲むことを「垂直試飲」と言うならば
まさにそれに当たる。

基本的なスタイルは、当然ながら同じであろうし、
どのようにコメントするか…はポイントを絞る事になる。

味わい分けに自信があるならば、微妙であろう風味の差を
小さいからこそ細密に感じ取っていく事。

でもそれよりも、時の流れがどのように影響しているか?
各々の年号がどのようなワインを造ったか?
という事の方が良いだろう。

実は30年近く前、この醸造所のワインに出会い、
私はザールワインの虜になった。
それほど美しくエレガントな造り手だ。
ラベルは当時と同じで地味。しかしながら
“ザールシュタイン城”という名から、この城に居住する貴族を
想像しながら、美しい酸に酔うのに十分だった。
(実際は貴族の家柄ではないのだが…)

その1996年に続いて飲んだこの1994年もの。
外観的にはほぼ同じか、もしかするとこの94の方が色が薄いかも…
という濃い黄金色。

香もほぼ同じ構成と展開を辿るが、年号に反して、こちらの方が若々しい。
時折起こる、古い方が若々しい…という状態だ。
微妙な甘さのツヤでは96年、繊細な美しさではこの94年…
という所だろうか。

14年を経たはずなのに、酒質は生き生きとして
繊細な酸は風味がぼやけるどころか、よりハッキリとして
スリムでタイトなカッコ良さを主張する。
このワインも、飲み残して5日以上もチビチビやってみたけど、
酸化せずに飲み続ける事ができた。

良い貯蔵は、命を縮めないのだなぁ…とあらためて思った。

[To Be Continued…]

08-0814ベルンハルト・フーバー来訪記念[35]見えない努力をする人~コルク(1)

セミナーの開催中、私はソムリエ役として栓を抜いた。
講演者の語る内容とタイミングを見計らう必要があり、
抜くとなるとスピーディーかつ正確に行う必要が生じる。

と言いながらも、折角の醸造界の巨人の話ならば、聞きたくもあり、
デュアル・プロセッサー駆動状態。
でも興奮状態の人間は、結構こなしてしまうものだ…
と思ったりした(実際は少し怪しかったろうが…)。

34p1ユンゲレーベン

さて、まずユンゲレーベンのコルクだが、45ミリ長の上質なもので、
ストレスなく綺麗に抜けた。
スピィーディーに抜いてもコルクの角が欠けなかったのは、
自分のウデが良くなったからだ…と勝手に思ったりもした。
(実はコルクの良さである事を後で悟った)

しかし二番目のマルターディンガーを抜いて、
あれ?…と思った。
ボトルの外観は酷似しているし、先程のユンゲレーベンのコルクが上質だったので、
多分同じ…と考えるまでもなく反射的に同じ動作をしていた。

4p1マルターディンガー

が、微妙に長く、まるで階段が一段多く、踏み外したような印象。
さらに抜けていく過程・抜き去るまでの感触が違う。
滑らか、かつ手応えが確実で柔らか。
長さは49ミリで4ミリも長いのだから当然だった。
でも長さだけでなく、質が極めて良いのが分かる。
それは何千・何万本と抜き続けた愛用のソムリエナイフを通して、
間違いなく伝わってきた。

この時点で、明らかに、ワインの等級によって
コルクを使い分けている事を理解した。
となると、次に控えるのが、2つ上のグレードのレゼルヴェだから、
私の期待と興奮は、抜く前から盛り上がっていたのは言う迄もない。

8p1
マルターディンガー・ビーネンベルク [R](レゼルヴェ)

頭封を切り外し、スパイラルを入れる。
そのねじ込んでいく間、前のコルクで出た振動音が全く出ない。
コルクの細胞が滑らかにスパイラルを吸い込み、
一体化していくような感触でさえある。

一巻きだけを残しテコでコルクを持ち上げた時、
瓶から上がった部分がスローモーションのように
広がり、滑らかに上がって行く。

思った通り、先程の49ミリより更に長い…と感じながら、
スパイラルの最後の一巻きをねじ込み、もう一度同じアクションを繰り返した。

そのさまは、まるで大物を釣り上げた太公望のごとく、
ワイン好きにとって至福の、そして感動の瞬間。

抜いたコルクを見ると、間違いなく54ミリ、
しかもその質がパーフェクト。
このレベルのコルクは、質まで含めるとボルドーの1級でさえ
及ばない事があったような気がする(長さは同じだとしても…)。

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左から、ユンゲレーベン、マルターディンガー、
アルテレーベン(今回は抜かず)、レゼルヴェに使われているコルク

そして、この事に気づいているのは、会場の中では、
私と傍らのスタッフのみ。…このコルク、特にレゼルヴェに打たれているのは、
一本が1ユーロより高いと判断できた
(二年程前に、最上級品に一個あたり1ユーロを払う…と言っていた。
それよりは上質なのが体感できた)。
セミナーでは、この事について語ってくれるもの…と思っていた。

が、フーバー氏は、コルクについては何も語らない。
イジイジしながら聞いている私は、質問時間が終わりそうになった時、
我慢ならず、主催者側という立場も忘れて、飛び出してしまっていた。
このコルクたちを並べ、質問せずには居られなかった。

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するとフーバーさん、さほど表情をは変わらず、

『コルクは醸造家にとって永遠の課題であり、
私は最上のものを使っている』

と言った。

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そこから開示されていくデータには、再度驚かされる事になった。

[To Be Continued…]

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08-0814 熟成ドイツワイン[03]次は2番目、さらにコルク上面。

前回、カビが生えるのは、良い貯蔵の証…と言った。
実は、逆のクレームがくる事もある。

「良い貯蔵をしているハズなのに、このコルクの上面にはカビがない。
貯蔵状態が悪い疑いがある」

…というものだ。

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実際の所、コルクはすべてが均一ではないので、上面の濡れ具合も
個々が違っている。
また、セラーの中も、微妙に違う場所にあるから、
すべてに均一なカビが生えるという保証はない。

生えないから悪いという訳では決してなく、
非常に厳密な貯蔵状態の下であっても、
カビが生えたり生えなかったりする、としか言えない。
内容が優良か、不良か…は、栓を抜いてワインに接してみるしかその方法はなく、
コルク上のカビの有無だけで、ワインの良否を語る事はできない。

上の写真のワインは、これから以下でティスティングしたワインだが、
コルクのカビは少ないものの、内容は文句なく健全だった。

(8)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング シュペートレーゼ
[1996]シュロス・ザールシュタイン

色彩は、カビネットより濃い黄金色。
このワインも深い色合いで、薄い色しか見てない人は驚くかもしれない。
しかし、透明度も艶もしっかりとしており、
熟成ワインとして、健全である。

スタートの味の立ち上がりでは、カビネットと大差ない…
と言うよりも、どちらかと言えば、このシュペートレーゼの方が
よりフラット…平坦でのっぺりしたようにさえ感じた。
しかし、空気に触れて開いてくると、折り畳まれた羽が伸びるように
大きく羽ばたき始める。

香が豊かに、そして味わいが次々と立ち上がってくる。
柑橘系でも最もクリアーでスッキリとした、レモンの果皮の香を中心に、
蜂蜜の甘い香…これですでに香のレモネード。

フーダー(大樽)だから、オーク香も焦げ臭も付かないドイツワインだが、
熟成という、大きな樽の中での貯蔵によって、木の香を得る。
それは、樫樽のスパイシーなものではなく、
しっとりとした杉の木の香。

そしてリースリングは、良い熟成域に達すると、
まるで同じ樽の中に入れられたように、
この香を漂わせる事になる。

同じ年号・蔵元のカビネットを一緒に飲んでいるので、
より糖がある分、優しく豊かな味わいを楽しめる。
と言っても、甘過ぎる残糖でなく、心地よく安らげる風味。
味わいに深みと艶やかさがあり、ゆったりと楽しめた。

このシュペートレーゼも、生き生きとしてアライブ。
抜栓後も冷蔵庫貯蔵で一週間を過ごしたが、
全く問題なく飲み続ける事ができた。
十分な生命力を感じ取る事ができたワインだ。

[To Be Continued…]

08-0813ベルンハルト・フーバー来訪記念[34]白熱のライブは続く

醸造家が来訪してのセミナー…といえば、
その醸造家が語る事がすべてのように感じられるかも知れない。
例えば百人を越えるオーディエンスで行うセミナーなら、
そうならざるを得ないだろう。

しかし少人数だと、話は違ってくる。
講演者だけでなく、参加者もその会を作っていくことになる。

この日、昼はホテル・レストランなどの業務店関係、
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夜は、一般の方々…という二部制で行った。
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フーバーさんが話す、主体の部分は、
これまでに書いたようにほぼ同じだった。
が、前者が、仕事の途中で、夜の仕事を控えて比較的静かに終了したのに比べると、
後者はエンスーが多く、突っ込んだ質問が多く出る事になった。

それに応えるフーバーさん、すべてに対して150%体制で臨んでいるだけに
語る一言一言に熱が籠もっていく。

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「緊張すると長くしゃべる」
と本人が言う通り、
語りだすと止まらない状況になっていく。

先に開いたDr.ヴァイルのセミナー時も、
会場からのディープな質問が多く出た。
通訳が訳せない語句が出たりもしたが、一つ一つの質問に真摯に答えてくれた。
冷静な対応の内側に、ワイン造りの人物としての情熱をはっきりと見てとれた。
多分、普通では見えない、彼の本質に迫る事ができたのだろう。

今回の通訳は、フーバー醸造所で一年以上働いた人物であるだけに
細かいニュアンスまで伝わり、より深いやり取りが展開された。

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手前が通訳・山野氏

お行儀良く聞くオーディエンスに対して語るのも、
セミナーの一つのスタイルだろう。
しかし、分かる人の前では、より熱く、より深く語ってこそホンモノ。

ノリの良いライブ状態になった、この日の一般向けセミナー、
一段とディープで、白熱した内容となっていく。
次のスケジュール(夜の夕食会)が入っているのに、終わらない。
さながら、スタンディング・オベーションの中で
熱く続くエンドレス・ライブ。

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フーバー ピノ ゼクト b.A. ロゼ ブリュット 750ml

このゼクトには1本1本フーバー氏の奥さんの
サインが書き込まれています。

こんなオーディエンスそしてセミナーならば、
きっとフーバーさんも喜んでくれたに違いない。

[To Be Continued…]

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08-0813 熟成ドイツワイン[02]まずは1番目、そしてコルク上面。

何やってんだ、もぅ…

多くのワインを並べて比較しながら飲んでしまうので、
順番がおろそかになってしまった。
この中で一番に向かうべきは、これからだ。
(以降、適宜順番を考慮しながら進めていく)

(6)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング カビネット
[1996]シュロス・ザールシュタイン
ワインの外観…つまり液体の状態・色などを言う前の準備が
熟成ワインには必要だ。

ラベル状態、液面高さ、外からの色彩、
そして頭封を外した後の、コルクの上面である。

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こんなカビが生えた状態だったとき、普通の人が
どんな反応をするかをご想像戴きたい。

これこそが、時を重ねた年輪、素晴らしい貯蔵の証、
喜ぶべき証明書!
と言っても、一度ネガティヴ側に傾いた王様の心を戻すのは難しい。
だからこそ、最初から、知識という免疫を取り込んで貰う必要が生じる。

ワインはコルクを通して呼吸をする。
だからコルク上面にその痕跡が残る。
一方、ワインにとって最も適した条件は…と言えば、
12℃程の一定温度で、湿度が70%程度、しかも光が当たらない場所。
この条件下で、正常な息をしたコルク上面に、
カビが生えるのは当然である。
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逆に考えれば、温度が大きく上下したり、湿度が低かったり、
太陽などの紫外線光が当たっていれば、カビは生えないだろう。
呼吸をしないワインもカビとは無縁だ。

…こんな事、ワインの世界では常識ではあるが、
熟成ワインを経験しないまま、ワインのシェアが広がってしまった現在、
こんなカビを見たら、嫌悪感を抱かれても仕方がない。

一般の方からの問い合わせならまだしも、
レストランを開いて3年以上のシェフが
「大丈夫か?」と問い合わせてきた事さえあり、
御存知でない人を、決して知識不足とは言えない。

画像で見て戴いておけば大丈夫だろう。
くれぐれも申し上げておくが、カビの根が、コルクを突き抜けて
ワインに到達する事はあり得ないのでご安心を。

ただ、中身とグラス内で混ざっては困るので、
濡れた布やティッシュで、ていねいに拭き取って戴きたい。

さて、これからが、一般的なティスティング。
グラスに注いだ時の外観は、やや濃いめの黄金色。
モーゼルの、ザール流域のワインとしては、少々深い黄金色だ。
ただ透明感もあり、健全な領域内の色の濃さであり、美しさも健在。

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2006年カビネット    1996年カビネット
色の差は顕著だ

香はリースリングのお約束である、レモンやライム、そして蜂蜜。
…そして何よりも熟成リースリングが発する
「杉の木の濡れた香」。
さらにはオーク、そして森の下草などの熟成香も基底から僅かに漂う。
時の流れという贅沢な積み重なりでしか到達できない、絶妙な熟成香。

甘みは比較的抑えられている。また熟成により僅かに沈んだ感がある。
一方、ザール特有の酸は全く健在。12年という時の流れにビクともしていない。
酒質は生き生きとしており、死亡寸前のわびしさではなく、
まだまだ生き続ける生命感にあふれている。

控えめな甘みと、しっかりした酸によって、
ある程度のお食事と合わせる事が可能になっている。
ハムやソーセージなどは言うまでもなく、
旨味の多い和食、寿司などには好適である。
実際、経験してみないと分からない、絶妙なマリアージュが楽しめる世界だ。

[To Be Continued…]