08-0927 ベルンハルト・フーバー来訪記念[46]沖縄プチット・リュにて(2)

この雰囲気を悟れば、
そして沖縄という土地柄を考えれば、
これはもう、皆で飲むしかない!
と心が動いた。

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この心優しき人達が、ワインに接し、理解し、
楽しんでいるのを見ると、
究極のピノノワールの一つである
このヴィルデンシュタインを飲んで頂くしかないだろう。

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って事でソムリエの資格も持つ新屋シェフに開けて貰う。
シェフは、大きなグラスを8つも出してきた。
良く考えると、ワインが売れない店で、こんなにグラスが、
しかも数があるはずはないのだ。

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注がれるヴィルデンシュタイン。
緩やかに弧を描きながら美しく動く。
立ち上がるのは、しっかりと樫樽で熟成させた、たおやかな香。
そして赤いフルーツの香が玉手箱を開けたように溢れる。
白眉の爺ぃになろうとも、手の中の珠を揺らし続けるしかない。

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ヴィルデンシュタインは鉄分が比較的多いビーネンベルク畑の中でも
最も多く含むので重めになる…
という先入観が、全く違っていた。
この珠からの滴りは、優雅、それ以上に
時の流れを忘れさせるスケールで展開されていく。

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マルターディンガー・ヴィーネンベルク シュペートブルクンダー QBA レゼルヴェ

ビーネンベルクのレゼルヴェに、
ベルリンで鴎外の見たであろう舞姫をオーバーラップさせていたが、
このヴィルデンシュタインは、さらに異世界へ…

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ヴィルデンシュタイン

緻密な美しさに浸りながらも、周囲に飲まさずには居られない。
これこそは甘露!とばかりに、口に運ぶ。
止まらない余韻に酔いしれる私の舌の上で
時空を忘れさせる乙姫の舞が続く。

優雅・エレガンス・上品・可憐…赤いフルーツのてんこ盛り
複雑で深く、長く続き途切れない味わい。
しかし難解でなくシンプルに美味しい。
酒躯はファットでもパワフルでもない。
にもかかわらず美しく流麗で整っていて、後へ後へと要素が湧き上がる。
名残惜しさが途切れないような余韻。その優雅で細い心の糸に引きずられ、
更に注いでしまう、もう一杯。

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この日、沖縄の公設市場の片隅にあるプチット・リュでは
竜宮城の門が開き、乙姫の舞が繰り広げられた。
真にワインを愛する店主・奥さんそしてお客様のおかげである。

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我が家の家族は、それを実感し、嬉しくてしようがなかった。

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08-0926 ベルンハルト・フーバー来訪記念[45]沖縄プチット・リュにて(1)

だいたい、沖縄では泡盛、そしてオリオンビールが飲まれている…
それは間違いないだろう。
そんな意識を抱いて入った、このフレンチ・レストラン
「プチット・リュ」(小さな通りの意)には先客が3組居た。

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一番奥に座る二人の客、その隣に案内され着席。
予想に反してその二人が飲んでいるのは、
なんとメルロー100%のボルドー・ワイン。
モロ沖縄系の男の人(実は香川県出身だった)と、
女性が交わすワイングラス、
ウサギの耳にして聞く会話も、スノビッシュでなく、
分かった人のワインを楽しむ会話。
何?
ちょっと予想と違うじゃない。

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一つテーブルが空いた隣は家族連れ。
大阪から来た…という声が聞こえて来たが、
家族連れだけに、飲んでいたのは、ジュース類と
オリオンビール。

しかし、その向こうに二人で座る夫婦らしき二人、
テーブルには大きめのグラスに赤い色が踊っている。
風貌から、地元のご夫婦らしき印象。

…と言う事は、この店に来る、地元の人は、
なんと100%ワインを飲んでいるのだ!

フレンチ・レストランとは言え、8月21日という夏、
しかも沖縄の店でワインを飲んでる!
なんて、ワイン好きが、どんな気持ちになったか?
はご想像の通りである。

この店のオーナーとは昵懇だったので、私は、
ズゥズゥしくも自分のマイルストーンと認識している
フーバー醸造所のヴィルデンシュタインを
オーナー夫婦と飲もう…と、前もって送りつけていた。
タイミングを計ってスタートさせよう…
と私は思っていた。

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ヴィルデンシュタイン

そして時間の経過と共に、大阪から来たという家族連れ団体は帰った。
店には、両端に二人ずつ2組、
それ以外は我々3人(夫婦+娘)だけである。

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そんな時、向こうに座っていた地元夫婦からグラスワインの注文が入る。
そして質問が、
「このワインの葡萄は?ピノノワール。ふ~ん」
などと言っている。
ACブルゴーニュの優良品を飲んで、ここのシェフのセレクトを褒め、
感心しているのが聞こえた。

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08-0923ベルンハルト・フーバー来訪記念[44]見えない努力をする人~樽(3)

樽を考えるならば、素材を厳選し、乾燥を自分で行うだけでは、
まだ完璧とは言えない。
その樽にワインを寝かせて、
思いもよらぬ方向に育ってしまったら…
どんなに良いオーク素材でも意味は無い。

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だから彼は検証する。
シュヴァルッ・バルトのオーク材で作った樽に入れたものと、
トロンセの樽に入れたワインを比較試飲した。
両者は甲乙つけがたい熟成を成し得ている事が確認できた。

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『バーデン』が将来的な樫樽産地として認識される…
という実感を得たとのこと。
我々は近い将来、樽の産地として、
シュバルツ・バルトやバーデン…といった名称を
耳にする事になるのだろう。

究極のオークを選び、
手元で最高の状態になるように育て、
実際にワインを入れて素晴らしい熟成をする確認を得たからこそ、
2007年産のものから、ドイツ産樽を使ったワインをリリースする。

その樽は、葡萄と同じく、
完璧主義者=ベルンハルト・フーバーの血が通ったものになる。

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期待したい。
その樽に抱かれたワインが
舌の上で踊るダンス。

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08-0921ベルンハルト・フーバー来訪記念[43]見えない努力をする人~樽(2)

セミナーの時、プロジェクターで写し出された映像には、
樽造りをする人が写っていた。それに対して

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「実際、ドイツのオークを使っているのか?」

と質問が入った。フーバーさん、答えていわく、

「今日、飲んだものはすべてフランス産オークだ。
アリエ、トロンセ、ベルフォラン、フォゲーレ…。
しかし今、ドイツの樫を準備している。」

まぁ、150%の男だから、ドイツの樽を準備する、
と言っても、ドイツ産オーク樽の既製品を買う…
というレベルではないだろうな、とは思っていた。

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「私の醸造所から20km程離れた場所に、クリスチアンという人物が居る。
彼は、シュヴァルツ・バルトを管理し、オーク材をフランスに輸出している。
私は、彼に頼んで、標高400mほどの、砂岩に生えた
シュバルツ・バルトにあるオークを選ばせて貰っている。」

やはり、完成品の樽でもなければ、樽材の素材でもない。
なんと、フーバーさんは、オークの原木を調達していた。
しかもそのオークの素性まで徹底的に検討して…

「この人と森に入り、樹を伐採し、年輪を確認してきた。
その年輪は極めて小さく、良い状態だった。
それを伐採して貰い、醸造所の裏の広場で
3年間の天日乾燥の途中である。
一部をトロンセの樽業者に渡しており、
2007年ヴィンテージからは、ドイツ・オークを使ったものが、
全部ではないが、登場する事になる。」

“ドイツ産の樽を使う”…この言葉の意味がフーバーさんにとっては、
オークの生えている森の観察を行い、
原木の生え具合を確かめ、
さらに切って年輪や材質を確かめ、
それを製材して、自分の手元に置いて
3年間、手間暇をかけて天日乾燥させ
それを使って樽を組み上げる…という意味なのだ。

彼は繰り返し言った。
「ワインを造る構成要素は一万、いや十万通りがあるだろう。
細かい要素の改革を繰り返し、
その積み重ねで私のワインができる。」

4p1マルターディンガー

彼のワインが美しく輝くのは、誰も真似のできない、
最高の構成要素に裏打ちされているからに他ならないようだ。

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08-0920ベルンハルト・フーバー来訪記念[42]見えない努力をする人~樽(1)

高品質なワインを造るとすれば、『樽』を避けては通れない。
それも力押しのパワフル・ワインでなく、
繊細・微妙でエレガントなピノ・ノワールを中心に、
高級ワインに対応させる事を考えるとすれば…
当然ながらフランス産、アリエやトロンセの樽に思い至る。

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しかし、それらの樽にフーバーさんは完璧には満足できなかった。
なぜならば、最高品質の、同じ樽を同じ時期に10樽注文して
ワインを入れて育ててみたら、一つ一つの味が違ってしまったからだ。

コルクと同じく、化学工業製品ではないから、
一つ一つの材質が均一ではないのだ。
それよりも、この樫材を天日干しする時、
一列で並行に並べる訳にいかないので
組みあげて乾燥させることになる。
すると、雨の掛かり具合と、下からの湿気の差が出て、
乾燥の進み具合に差が出てしまう。
その樫材を樽にしたとすれば、香と味の差が出て当然なのだ。

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そこで、アリエの樽材を購入して、醸造所の裏側で
自分で乾燥させる事にした。
それも原材料を低く積み、上下の差が極力小さくなるようにした。
さらに、数ヶ月毎に上下を組み直し、
乾燥の度合いの均一化を図る…という手間をかけた。

「これで味香の差は小さくなるはずだ」

という彼の言葉に、会場から
「動瓶のように手間をかけているんだ」と、感嘆の声があがる。

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アルテレーベン

素材の一つ一つを見直し、吟味し、最高の状態に持ち込む。
乾燥させる樽材の低層積み、そして組み上げ直し…

「毎年小さな改革を繰り返し、
その積み重ねで私のワインができる」

このフーバーさんの言葉は、誰の言葉より重く感じられた。

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08-0919ベルンハルト・フーバー来訪記念[41]見えない努力をする人~収穫量(4)

『毎年良くなる』

その理由の説明を受け、確かに品質が上がるだろう…
と納得した様子の質問者。
しかし、すぐまた次の質問を下さった。

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“品質を上げる為に“量”を犠牲にしたなら、
我々日本人など到底買う事ができなくなるのではないのか?”

現実にここ数年は買えていたようだし、
今も買えているじゃないか。
本当にそれだけ収穫量を絞り込んだ造りを行っているのか?
という真意だったのだろう。

因みにこの方は赤ワインは不慣れなようで、
ほとんど口を付けないまま赤ワインを残されていた。
じっくりと味わって頂けたなら、きっとお分かり下さっただろうに…
と少々残念ではあった。

実は、フーバー醸造所のワインは、
輸入業者であるヘレンベルガーホーフと親密な人間関係を築いているため、
日本には特別に不足なく供給してくれている。

それがどれほどの集荷力か?を示す話を御紹介しておきたい。

ドイツ領事館勤めの人物が、ドイツ国内の三ツ星レストランに入り、
昨今有名になったフーバー醸造所のワインを飲もう…とした。
しかし、ワインリストを見ると、すべてに×が付いて
「Sold Out」
になっている。

一体これはどうなっているんだ!
とレストランの経営者に問いかける。
すると、
「あなたたち日本人が買い占めたからなんですよ」
と言われた…とのこと。

高品質ゆえに生産量が少ないフーバー醸造所のワインだが
日本に優先して回しているために
ドイツ国内のレストラン、ひいては世界レベルでは
かなり不足している‥というのが実情だ。

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品質を上げる為に収穫量を厳しく絞り込む。
その賜である高品質を得たフーバー醸造所のワインを
日本では楽に手にする事ができる。
これは実は、スゴくありがたい状況のようである。

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08-0914ベルンハルト・フーバー来訪記念[40]見えない努力をする人~収穫量(3)

2004年以降、すべての葡萄に対して、
この処理(トラウベン・ハルピエーレ)を行うようになった…
と聞いて驚いていた私だが、
不作だったという2006年には、更にもう一歩、
踏み込んだ作業を行っていた。

2006年は収穫の直前に土砂降りの雨が続き、
この処理を行っても、葡萄の実が弾けるものが出始めた。
そうなると野生酵母が付いて発酵がスタートしてしまう…
早い話、腐るのだ。
外観は正常でも、内部で実が弾け、腐敗している房がある。
外から見ただけでは判断がつかない曲者だ。

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その対応として、収穫時に一房づつ香を嗅ぎながら、
健全な房だけを選り、収穫か・廃棄かを決定したという。
労力は多大で、普段の収穫の3倍以上の時間がかかったそうだ。
そして、この収穫時には、半分以上を捨てた…と言う。
選果台の選り分けを遙かに超えた労力を費やし、思い切った廃棄を行っているのだ。

何の事はない。
毎年、同じ量のワインを造ってる…などと、誰も言っていないのだ。
どんどん人気が上がっているフーバー醸造所のワインは、
買い上げ価格が高くなっているから、生産量が減っても
それに見合う対価を得られるのだろう。

しかし、その品質上昇は、驚くほどの減量・努力の賜だったのだ。
その努力を知りもせずに、生意気に
「2000年以降、毎年良くなっている」
などと言っていた自分を恥じた。

切り落とされた葡萄、一つ一つ嗅ぎながら選り分けた労力…
ほんのワンシーンを知っただけでも
「毎年良くなってる」
という事実を確信し、
その言葉が重さを伴ったのを実感した。

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毎年良くなってるユンゲレーベン

本当に呆れた品質至上主義、そして徹底的に
見えない努力をする人物なのである。

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08-0901ベルンハルト・フーバー来訪記念[39]見えない努力をする人~収穫量(2)

私が主張した、
「2000年以降、毎年良くなっている」
に、納得しない質問者。

その人に向かって、フーバーさんは静かに語り始めた。

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「例えば、2005年は良い年だった。
良い気候が理想的なワインを造ってくれた。
しかし2004年、そして2006年のような年こそが、
栽培家・醸造家としての腕の見せ所なのだ。」

「簡単に言うと収穫時に悪い葡萄は捨てる。これが基本だ。
2006年は半分以上捨て、健全な葡萄だけを収穫・醸造した。
実は、すでに2000年に、多雨で不順な天候を経験しているので
その時以来、より良い葡萄を得る行程を確立している。それは…」

それは?の言葉につい身を乗り出し、聞き耳をたてた。

「北イタリアで使われている手法に習った。
具体的には、葡萄が糖化し始める頃、
つまり色づき始める7月15日~8月15日にかけて、
広がろうとする葡萄の房の上肩を落とし、さらに房の下2/3をカットし、
小さな卵程度の大きさだけを残すのだ。」

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ホワイトボード右上に書かれた葡萄切り取りの手法

こんな強烈な手法だから、もしかしたら、
その処理に名は付いていないか?
と思って尋ねたら フーバーさんは

「トラウベン・ハルピエーレ」(収穫半分)
と言った。
実際は1/2より減ってしまう、決して他所では真似のできない手法だ。

「これによって 実が下がり、実と実の間が空き、
粒のお互いが押し合わない状況となり、腐らなくなる。
実際、2000年は非常に難しい年だったが、
これによって上手く収穫する事ができた。」

何のことはない、収穫量を徹底的に犠牲にして、
質の高いワインを造っていたのだ。
前の年より品質の高いワインがいつも出てきた…。
その秘密はこんな犠牲の上に成り立っていたのか…と驚いた。

その詳細は、驚きを通り過ぎて、
呆れるような数値により納得させられた。
1haに一万本を越える超密植の彼の畑では、
その樹から8~12本の枝が出て、
各々2房づつがついている。
房一つずつに手抜のき無い処理を施していくのだから、
超人的な精神力と体力が必要な、気の遠くなるような作業。

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樹からの枝の伸ばし方、葡萄の房のレイアウトを細かく説明

同じピノノワール葡萄でも、ニューワールドでは、
1haに対して年間40時間の労力で臨み、コストダウンを図る。
しかしフーバー醸造所ではなんと800~1000時間超を費やすことで、
より高い品質に仕上げているのだ。
「2000年以降、毎年良くなっている」
それは事実だし、その影にこんなとんでもない努力が潜んでいたなど、
考えもしなかった。
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