08-0815 熟成ドイツワイン[04]3番手は1994年もの、コルク上面に濡れ

コルク上面が濡れている事がある。
1994年、14年を経たワインでも…だ。
これは当店のセラーだけが持つ特質かも知れないが、
状況を説明する必要がある。

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この濡れは、外部からのものではなく、内部の液体のごく一部が
湧き出たものだと判断できる。
不思議なのは乾いていない…という事だ。
ワインセラーの湿度は高く70~80%程度だが、
いくら何でもちょっとだけ濡れたコルクが、
ずっと濡れたままであるとは考えられない。

と言うことは、ずっと内部のワインが湧き出し続けた…と考えられる。

ならば、液面がズン…と下がるか、と言えばそうではない。
14年を経たワインの液面としては正常以上に高い液面だ。

ある意味、不思議な状態と言えるコルク上面の濡れ…
なのだが、実存するのだ。
このワインに限らず、これまで例えば
JJプリュムの1990年代半ばでは良く見られた現象だ。
コルクのスタイルなのだろうが、液面が異様に下がってないとすれば、
このコルク上面の濡れも、不良とは言えない。
実際、この濡れ方で、液面が必要以上に下がったワインは
不思議にも皆無…と言えば驚くかも知れないが、事実だ。

なぜなのだろう…と思ったが、すべてのワインの頭封を捲って見る訳にもいかず、
問題が出ないので良いか…と判断する事にしている。

また、この銘柄・年号のこのワインも、すべてがこうではない…
とだけ申し上げておく。

(7)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング シュペートレーゼ
[1994]シュロス・ザールシュタイン
このワインは、一つ前に飲んだ1996年より2歳年寄りだ。
年号を変えて、同じワインを飲むことを「垂直試飲」と言うならば
まさにそれに当たる。

基本的なスタイルは、当然ながら同じであろうし、
どのようにコメントするか…はポイントを絞る事になる。

味わい分けに自信があるならば、微妙であろう風味の差を
小さいからこそ細密に感じ取っていく事。

でもそれよりも、時の流れがどのように影響しているか?
各々の年号がどのようなワインを造ったか?
という事の方が良いだろう。

実は30年近く前、この醸造所のワインに出会い、
私はザールワインの虜になった。
それほど美しくエレガントな造り手だ。
ラベルは当時と同じで地味。しかしながら
“ザールシュタイン城”という名から、この城に居住する貴族を
想像しながら、美しい酸に酔うのに十分だった。
(実際は貴族の家柄ではないのだが…)

その1996年に続いて飲んだこの1994年もの。
外観的にはほぼ同じか、もしかするとこの94の方が色が薄いかも…
という濃い黄金色。

香もほぼ同じ構成と展開を辿るが、年号に反して、こちらの方が若々しい。
時折起こる、古い方が若々しい…という状態だ。
微妙な甘さのツヤでは96年、繊細な美しさではこの94年…
という所だろうか。

14年を経たはずなのに、酒質は生き生きとして
繊細な酸は風味がぼやけるどころか、よりハッキリとして
スリムでタイトなカッコ良さを主張する。
このワインも、飲み残して5日以上もチビチビやってみたけど、
酸化せずに飲み続ける事ができた。

良い貯蔵は、命を縮めないのだなぁ…とあらためて思った。

[To Be Continued…]

08-0814 熟成ドイツワイン[03]次は2番目、さらにコルク上面。

前回、カビが生えるのは、良い貯蔵の証…と言った。
実は、逆のクレームがくる事もある。

「良い貯蔵をしているハズなのに、このコルクの上面にはカビがない。
貯蔵状態が悪い疑いがある」

…というものだ。

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実際の所、コルクはすべてが均一ではないので、上面の濡れ具合も
個々が違っている。
また、セラーの中も、微妙に違う場所にあるから、
すべてに均一なカビが生えるという保証はない。

生えないから悪いという訳では決してなく、
非常に厳密な貯蔵状態の下であっても、
カビが生えたり生えなかったりする、としか言えない。
内容が優良か、不良か…は、栓を抜いてワインに接してみるしかその方法はなく、
コルク上のカビの有無だけで、ワインの良否を語る事はできない。

上の写真のワインは、これから以下でティスティングしたワインだが、
コルクのカビは少ないものの、内容は文句なく健全だった。

(8)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング シュペートレーゼ
[1996]シュロス・ザールシュタイン

色彩は、カビネットより濃い黄金色。
このワインも深い色合いで、薄い色しか見てない人は驚くかもしれない。
しかし、透明度も艶もしっかりとしており、
熟成ワインとして、健全である。

スタートの味の立ち上がりでは、カビネットと大差ない…
と言うよりも、どちらかと言えば、このシュペートレーゼの方が
よりフラット…平坦でのっぺりしたようにさえ感じた。
しかし、空気に触れて開いてくると、折り畳まれた羽が伸びるように
大きく羽ばたき始める。

香が豊かに、そして味わいが次々と立ち上がってくる。
柑橘系でも最もクリアーでスッキリとした、レモンの果皮の香を中心に、
蜂蜜の甘い香…これですでに香のレモネード。

フーダー(大樽)だから、オーク香も焦げ臭も付かないドイツワインだが、
熟成という、大きな樽の中での貯蔵によって、木の香を得る。
それは、樫樽のスパイシーなものではなく、
しっとりとした杉の木の香。

そしてリースリングは、良い熟成域に達すると、
まるで同じ樽の中に入れられたように、
この香を漂わせる事になる。

同じ年号・蔵元のカビネットを一緒に飲んでいるので、
より糖がある分、優しく豊かな味わいを楽しめる。
と言っても、甘過ぎる残糖でなく、心地よく安らげる風味。
味わいに深みと艶やかさがあり、ゆったりと楽しめた。

このシュペートレーゼも、生き生きとしてアライブ。
抜栓後も冷蔵庫貯蔵で一週間を過ごしたが、
全く問題なく飲み続ける事ができた。
十分な生命力を感じ取る事ができたワインだ。

[To Be Continued…]

08-0813 熟成ドイツワイン[02]まずは1番目、そしてコルク上面。

何やってんだ、もぅ…

多くのワインを並べて比較しながら飲んでしまうので、
順番がおろそかになってしまった。
この中で一番に向かうべきは、これからだ。
(以降、適宜順番を考慮しながら進めていく)

(6)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング カビネット
[1996]シュロス・ザールシュタイン
ワインの外観…つまり液体の状態・色などを言う前の準備が
熟成ワインには必要だ。

ラベル状態、液面高さ、外からの色彩、
そして頭封を外した後の、コルクの上面である。

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こんなカビが生えた状態だったとき、普通の人が
どんな反応をするかをご想像戴きたい。

これこそが、時を重ねた年輪、素晴らしい貯蔵の証、
喜ぶべき証明書!
と言っても、一度ネガティヴ側に傾いた王様の心を戻すのは難しい。
だからこそ、最初から、知識という免疫を取り込んで貰う必要が生じる。

ワインはコルクを通して呼吸をする。
だからコルク上面にその痕跡が残る。
一方、ワインにとって最も適した条件は…と言えば、
12℃程の一定温度で、湿度が70%程度、しかも光が当たらない場所。
この条件下で、正常な息をしたコルク上面に、
カビが生えるのは当然である。
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逆に考えれば、温度が大きく上下したり、湿度が低かったり、
太陽などの紫外線光が当たっていれば、カビは生えないだろう。
呼吸をしないワインもカビとは無縁だ。

…こんな事、ワインの世界では常識ではあるが、
熟成ワインを経験しないまま、ワインのシェアが広がってしまった現在、
こんなカビを見たら、嫌悪感を抱かれても仕方がない。

一般の方からの問い合わせならまだしも、
レストランを開いて3年以上のシェフが
「大丈夫か?」と問い合わせてきた事さえあり、
御存知でない人を、決して知識不足とは言えない。

画像で見て戴いておけば大丈夫だろう。
くれぐれも申し上げておくが、カビの根が、コルクを突き抜けて
ワインに到達する事はあり得ないのでご安心を。

ただ、中身とグラス内で混ざっては困るので、
濡れた布やティッシュで、ていねいに拭き取って戴きたい。

さて、これからが、一般的なティスティング。
グラスに注いだ時の外観は、やや濃いめの黄金色。
モーゼルの、ザール流域のワインとしては、少々深い黄金色だ。
ただ透明感もあり、健全な領域内の色の濃さであり、美しさも健在。

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2006年カビネット    1996年カビネット
色の差は顕著だ

香はリースリングのお約束である、レモンやライム、そして蜂蜜。
…そして何よりも熟成リースリングが発する
「杉の木の濡れた香」。
さらにはオーク、そして森の下草などの熟成香も基底から僅かに漂う。
時の流れという贅沢な積み重なりでしか到達できない、絶妙な熟成香。

甘みは比較的抑えられている。また熟成により僅かに沈んだ感がある。
一方、ザール特有の酸は全く健在。12年という時の流れにビクともしていない。
酒質は生き生きとしており、死亡寸前のわびしさではなく、
まだまだ生き続ける生命感にあふれている。

控えめな甘みと、しっかりした酸によって、
ある程度のお食事と合わせる事が可能になっている。
ハムやソーセージなどは言うまでもなく、
旨味の多い和食、寿司などには好適である。
実際、経験してみないと分からない、絶妙なマリアージュが楽しめる世界だ。

[To Be Continued…]

08-0810 熟成ドイツワイン [1]本当の美味しさを…

ドイツワインの評価本では、決まってニュー・リリースを評価し、
それを頼りに買う人も多いようだ。
蔵元から新しく出されたワインは、
実際は若過ぎる状態のはずだが、これはよく売れる。

到着したてで、まだ分子が暴れているような状態でも
若い物の方がより好まれる傾向があるようだ。

一方、貯蔵・熟成については、金利と貯蔵料が必要になり、
現在の、価格だけで価値を評価してしまう人が多い市場では、
個人的に熟成する以外は無理なのが現状。

つまり、現在の日本の流通では、
若いドイツワインしか認められないから、
綺麗に熟成したドイツワインは、ほぼ流通していないし、
本当の経験者となれば、さらに僅かな数になってしまう。
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この背景から、美しく熟成したリースリングを
理解できないならまだしも、
『不良だ』…などと断じたりする半可通が闊歩するから
余計に熟成ドイツワインの市場が縮まってしまう悪循環となる。

これが良い状態なのだろうか?
少なくとも、本当の熟成ドイツワインを
供給できる能力と自信があるので、歯がゆくてしようがない。

白ワインの中で、最も熟成する可能性を持つドイツワイン、
その素晴らしいポテンシャルを引き出せるセラーがあり、
またそんな貯蔵を行って来たワイン達が手元にある。

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ならば、ちょっとばかり気合いを入れてテイスティングして
みる必要も…という気になってきた。
今回は、あるレストランからテイスティングの依頼のあった
若いドイツワインも合わせて、未踏ともいえる
ドイツの熟成品についてレポートしてみたい。

ラインナップは以下。

(1)ベルンカステラー バートスチューベ
リースリング カビネット
[1996]ドクター・タニッシュ

(2)リューデスハイマー・ベルク・ローゼンエック
リースリング シュペートレーゼ
[1995]アウグスト・ケッセラー

(3)ホッホハイマー・ドムデヒャナィ
リースリング シュペートレーゼ
[1995]ドムデヒャント・ヴェルナー

(4)ホッホハイマー・ドムデヒャナィ
リースリング シュペートレーゼ
[1990]ドムデヒャント・ヴェルナー

(5)ホッホハイマー・ヘレ
リースリング シュペートレーゼ
[1994]ドムデヒャント・ヴェルナー

(6)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング カビネット
[1996]シュロス・ザールシュタイン

(7)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング シュペートレーゼ
[1994]シュロス・ザールシュタイン

(8)ゼーリガー・シュロス・ザールシュタイナー
リースリング シュペートレーゼ
[1996]シュロス・ザールシュタイン

(9)ナッケンハイマー・ローテンベルク
リースリング シュペートレーゼ
[1996] グンターロッホ

(10)ヤンパブティスト
リースリング カビネット
[1996] グンターロッホ

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以上、熟成品に加えて、今回の若い方の代表
(と言っても2006年だからそれほどではない…)
が、このワイン。

(11)レプホルツ
リースリング カビネット トロッケン
[2006]オェコノミラット・レプホルツ

そして上の写真に写っていないのは、ある人物が、
美味しさの余り、
『持って帰らせてくれ!』と切に希望した為である。

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そんな、一瞬にして理解し、愛でる能力がある人も居た事に自信をつけ、
知っている人も、ましてや経験した人も少ない領域だからこそ、
これこそが通の醍醐味とばかり気合いが乗る。

[To Be Continued…]

08-0417ベルンハルト・フーバー来訪記念[17]シュペートブルクンダー!

写真を撮る時の合い言葉定番は、「チーズ」。
しかし20年程前に会ったドイツの栽培家たちは揃って
「リースリング」と言った。
以来、私はドイツ人が来た時に、写真を一緒に撮る時は、
このパターンでキメる事にしている。

が、横に並んでカメラを向けられた途端、
フーバー氏の口から出たのは、この言葉ではなかった。
「リースリング」と言う私の声に被せてきたのは、

「シュペートブルクンダー」

そうか。彼の生きざまとしてこちらの方が自然だ。
ならば私も…と真似した。が、

おいおい。口元が緩まねぇじゃん、この単語は。
もう一枚!って言われて、再度言ってみた。

「シュペートブルクンダー」

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やはり笑顔を作るのは極めて難しい。
葡萄と同じく、浅い人間にはコントロール不能だ。

2007年、フーバー醸造所の作付面積の70%はシュペートブルクンダー。
この葡萄にかけるフーバー氏の心意気が
伝わって来る言葉ではあった。

[To Be Continued…]

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07-0513 特別試飲会・壁ワイン(マウワーヴァイン) [07] 前座6扱いだが…

前座6番目として登場させたのが、
特別なワインだ…ということで、仕入れた

(07)2004 アイラー・クップ リースリング カビネット
         アルテンホッフェン

             
          2,100円 (税込)

である。
何が“特別”かと言うと、
30年前のワインの造りをそのままを表現しようと
アルテンホッフェンが造った…とのこと。

古い造りとは何だ?
どんな味?どんな香?
…グラスからの香をたどると

確かに特殊な匂い。典型的なリースリングの香に加えて
パーマ液の臭い…サルファ?SO2系の残り香?
いや、天然酵母を使って醸造した場合、この匂いが出易いから、
それに違いないだろう。

日本では雨が多くて天然酵母は使いにくいが、
ドイツやフランスでは近年、多様されているようだ。
技術系の人間(と私は考えている)であるアルテンホフェンだからこそ
そういった造りをしたと推測される。

リースリングの香が明確に存在しているぶん、
他の香が良く分かる。
若い年号だから、もっと酸っぱいのかと思っていたが、
案外まろやか。
残糖は恐らく40g/Lを少し越えた所だろう。
味わいのバランスは、今までに
余り経験した事のない世界と言える。

アルテンホフェンの造ったタイムマシン。
彼の描いた過去の姿。
当時を知るべくもない私としては、
昔はこんなワインだったんだろう…と思いを馳せた。

トータル的に良い仕上がりで、
味香バランスがなかなか面白い。
コストパフォーマンスは、極めて良い。
参加者の中には、この日のベストワインに選んだ人も居て、
アルテンホフェンの面目躍如。
                         [To Be Continued..]