10-0316 ボルドー物語 [05-4]

シャトー・マルゴー その4
退廃的な美の象徴。そして破滅…

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ラフィットの気品を越えたセクシーさと膨らみを持つワイン。
そしてルイ15世が腹心達に漏らした言葉が、
すべて当てはまるような、退廃的でさえある美の象徴、
それこそがシャトー・マルゴーと言えるだろう。

小説家に好まれる要素をしっかりと詰め込んである点で、
ヘミングウェイがその美味しさに感激して娘に「マーゴ」と付けたとか、
日本の小説でも主人公が死ぬ前に飲むとか、
色んな場所に登場してくるのは、その味香がさせることだろう。

なんと、デュ・バリ夫人は、これを手に入れる為に
義弟のデュ・バリ伯爵を、マルゴーの所有者である
フュメルの一人娘と結婚させたのだ。

そうでなくても王におねだりして、城だ、貴金属だ…と、
富を築いていたデュ・バリ夫人の敵が
いっそう宮中に増える(*203)結果となった。

だからルイ15世63歳死去で、一挙に失墜。
義弟さえもアルジクール伯爵と変名し、絶縁してしまう。
周囲から完全に孤立し、デュ・バリ夫人は完全失脚した。

こんな、悲しさや破滅的な要素も匂わせる部分も、
もしかしたらシャトー・マルゴーの魅力の一つなのかも知れない。

[To Be Continued…]
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(*203)デュ・バリ夫人の名前の 「バリ」は、仏語のワイン樽と
同じ発音。同じく樽を意味する「トノー」という言葉を使い、
宮中で風刺が横行した。つまりデュ・バリ夫人そっくりの
化粧をさせた高級娼婦を 「デュ・トノー夫人」と称して、
ヌードにさせ、樽の鏡を抜いた筒状になった物を着せて、
皆の前を連れて歩いたという。

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