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08-0504 蒜山ワイン ニュー・リリース4

今回のひるぜんワイン『2006年・山葡萄・樽貯蔵』は、
価格が3,990円と、はっきり言って高く感じるかも知れない。

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『2006年・山葡萄・樽貯蔵』

この東洋的なワインは、当然ながら、ヤマブドウで造る。
すべての特徴をもたらすヤマブドウこそが、
コスト高の原因であるのは間違いない。

粒の詰まりが少ないとか、房の数が少ない…という部分だけでなく、
最も厄介なのが、雄木・雌木がある事だ。

当然ながら雌木にしか葡萄の実はならない。
雄木は花粉を飛ばすだけ…という理論から、
ほとんどを雌木にした年もあった。
しかし、その年の葡萄の収穫量は悲惨な状態になってしまったので
元の比率に戻したという。

この特性によって、単位面積あたりの収穫量は、
通常の葡萄の1/2になるのである。
その代償を支払ってこそ、

『透明感と美しさもある深く濃い色彩』

『山桃やザクロなどの果実風味を持った特徴的な香り』

『酸が一つの骨となり、全体像を構築していく』

『余韻は思ったより長く、ゆったりと続いていく』

そういった特性を得る事ができるのだろう。
その上に、年々の進歩、樽使いの巧みさ。
僅かながらもエレガンスを感じる位置に到達できているならば、
この世界中で唯一無二な存在を
認めてやっても良いような気がする。

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少なくとも私は、今回の
『2006年・山葡萄・樽貯蔵』については
“岡山のワイン”として
他県の人に飲ませる自信を持てた仕上がりだった。

[The End]

08-0422 蒜山ワイン ニュー・リリース2

『今迄で最高品質の“ひるぜんワイン”』
と感じられたこのボトル、正体は何なんだ…
と植木さんに問う。

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すると、2006年産の樽貯蔵分を実験的に残し、
少量だけ9ヶ月間貯蔵し、ブレンドしたもの…という。

ブレンドと言っても、セパージュはこんな状態。
2006    ヤマブドウ樽貯蔵    92.31%(→面倒なので93%と表記)
2006、2005 ヤマソービニオン樽貯蔵  7.69%(→7% 〃 )

一般的な表記をするならば、

『2006年・山葡萄・樽貯蔵』
として問題は無いし、ヤマソービニオンのブレンドを
表記する必要は無い。

香が複雑で豊かだった理由は、
樽貯蔵を9ヶ月間という長期間行ったという点、そして
93%の比率であるヤマブドウを入れた樽は、単一種類でなく
3種類使ったからだろう。

その3つの樽は、フランス産アリエを2/3(製作所が異なるものを1/3づつ)、
アメリカン・オークを1/3である。

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前回のテイスティング・レポートで
『余韻の中にも樽のヴァニラ香が絡みつきながら伸びる。』
と表現した風味は、この辺りに秘密があったようだ。

それも、未踏の期間=9ヶ月という長期樽貯蔵に挑戦するのは、
造り手としては冒険と感じたのか、
生産本数はわずか50箱のみである。

ヤマブドウで造るひるぜんワインが、
繊細な構成なのは間違いない。
色素は息を飲むほど濃く、ポリフェノールは多いのだが、
その線が細くも感じるボディのワインを
どの程度樽貯蔵できるか…は、
非常に難しい所である。

が、少なくとも今回の完成品は、
成功と呼べる領域に達している。

ただし、ひるぜんワイン醸造所は、この50箱の樽貯蔵バージョンを
2007年ヤマブドウワインをリリースするまでのつなぎ…
としか考えておらず、
いつから出荷するかは返答が無かった。

そこで、折角の品質を知った私としては、
無理を言って少数を瓶詰めして貰い、入荷した。
まだ、出回っていない

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『2006年・山葡萄・樽貯蔵』

である。
通常の3ヶ月熟成のものと区別するため、
こんなラベルを裏に貼った。

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やっと、岡山のワインとして胸を張って出せる物が
生まれてきたようで、自分としても嬉しい気持ちで一杯である。

08-0413 蒜山ワイン ニュー・リリース

年々確実に内容がステップ・アップしている蒜山ワイン。
造り手の植木さんからティスティングの依頼が来た。

毎度ながらこのスタイル。
素っ裸で、ラベルも何もない。
添付データも付いてこない。

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何かを当ててみろ…という事ではなく、
純粋に味だけの評価が欲しい…という事なのだろう。
さらに今回は、できれば…という事で
5房の巨人=ベルンハルト・フーバー氏にも
コメントが貰えぬか…という依頼も付いていた。

フーバー氏が、予定時間より早い到着となり、
時間的余裕ができたのでお願いした。
フーバー氏は、笑顔で快諾。
グラスに注いでみるとエッジに、少しレンガ色。
…これは、2007年ではないな…とは、すぐに分かる熟成色。

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グラスが大きいこともあったが、
香を嗅いだフーバーさん。
「これは、良い香りだね」
と一言。
そして結構期待を持って見えた横顔で口に含んだ後、もう一度
「良い香りだ…。」
と言って終わった。

つまりは、ボディとかフィニッシュに、彼の賛辞は無いという事である。
まぁ、5房という世界のトップレベルだからしょうがない。

では、仕事柄、ありとあらゆるレベルのワインを経験する私が、
ティスティングさせて戴こう。

まずは外観。
エッジにかすかにレンガ色がある。
しかし中心部分は紫色。
まるで過去と未来が同時に存在するような、相反する要素。
さらに透明感と美しさも持っている。
不思議な気持ちにさせられ、期待感をそそる。

世界の頂点の一人、フーバー氏が褒めるだけある香。
樽に起因するヴァニラ。しかも構成要素が一つでない複雑なオーク香。
果実は赤系の印象。
そして何よりも山桃の香り。
これがヴィティス・コワニティエたる山葡萄の特質なのか。
さらにグレナデン、オレンジ、夏みかんの渋さ。
独特の要素が構築していく香は、『ひるぜんワイン』だけが持つ世界。
香の固有性と複雑さは見事であり、
世界の巨人が褒めた事も納得ができる。

醸造にあたって減酸をしっかり行ったと言うが
依然として十分な酸が要素として存在する。
しかし、数年前の、耐えられないほどの酸はナリを潜め、
酸が一つの骨となり、全体像を構築していく。

ボディはライト寄りのミディアムでスリム、
しかし味の余韻は、思ったより長く、ゆったりと続いていく。
余韻の中にも樽のヴァニラ香が絡みつきながら伸びる。

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飛びっきりとは言わないが、エレガンスを感じられる。
山葡萄、ヴィティス・コワニティエ。
誰にも似てない孤高の存在。
『東洋的』と表現したいエキゾチックなスタイル。
フーバー氏も褒めた香の良さ、静かに続く余韻は見事。
ここ数年で、よくこの進化を得たな、
と感動させてくれた仕上がりだった。