08-0814ベルンハルト・フーバー来訪記念[35]見えない努力をする人~コルク(1)

セミナーの開催中、私はソムリエ役として栓を抜いた。
講演者の語る内容とタイミングを見計らう必要があり、
抜くとなるとスピーディーかつ正確に行う必要が生じる。

と言いながらも、折角の醸造界の巨人の話ならば、聞きたくもあり、
デュアル・プロセッサー駆動状態。
でも興奮状態の人間は、結構こなしてしまうものだ…
と思ったりした(実際は少し怪しかったろうが…)。

34p1ユンゲレーベン

さて、まずユンゲレーベンのコルクだが、45ミリ長の上質なもので、
ストレスなく綺麗に抜けた。
スピィーディーに抜いてもコルクの角が欠けなかったのは、
自分のウデが良くなったからだ…と勝手に思ったりもした。
(実はコルクの良さである事を後で悟った)

しかし二番目のマルターディンガーを抜いて、
あれ?…と思った。
ボトルの外観は酷似しているし、先程のユンゲレーベンのコルクが上質だったので、
多分同じ…と考えるまでもなく反射的に同じ動作をしていた。

4p1マルターディンガー

が、微妙に長く、まるで階段が一段多く、踏み外したような印象。
さらに抜けていく過程・抜き去るまでの感触が違う。
滑らか、かつ手応えが確実で柔らか。
長さは49ミリで4ミリも長いのだから当然だった。
でも長さだけでなく、質が極めて良いのが分かる。
それは何千・何万本と抜き続けた愛用のソムリエナイフを通して、
間違いなく伝わってきた。

この時点で、明らかに、ワインの等級によって
コルクを使い分けている事を理解した。
となると、次に控えるのが、2つ上のグレードのレゼルヴェだから、
私の期待と興奮は、抜く前から盛り上がっていたのは言う迄もない。

8p1
マルターディンガー・ビーネンベルク [R](レゼルヴェ)

頭封を切り外し、スパイラルを入れる。
そのねじ込んでいく間、前のコルクで出た振動音が全く出ない。
コルクの細胞が滑らかにスパイラルを吸い込み、
一体化していくような感触でさえある。

一巻きだけを残しテコでコルクを持ち上げた時、
瓶から上がった部分がスローモーションのように
広がり、滑らかに上がって行く。

思った通り、先程の49ミリより更に長い…と感じながら、
スパイラルの最後の一巻きをねじ込み、もう一度同じアクションを繰り返した。

そのさまは、まるで大物を釣り上げた太公望のごとく、
ワイン好きにとって至福の、そして感動の瞬間。

抜いたコルクを見ると、間違いなく54ミリ、
しかもその質がパーフェクト。
このレベルのコルクは、質まで含めるとボルドーの1級でさえ
及ばない事があったような気がする(長さは同じだとしても…)。

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左から、ユンゲレーベン、マルターディンガー、
アルテレーベン(今回は抜かず)、レゼルヴェに使われているコルク

そして、この事に気づいているのは、会場の中では、
私と傍らのスタッフのみ。…このコルク、特にレゼルヴェに打たれているのは、
一本が1ユーロより高いと判断できた
(二年程前に、最上級品に一個あたり1ユーロを払う…と言っていた。
それよりは上質なのが体感できた)。
セミナーでは、この事について語ってくれるもの…と思っていた。

が、フーバー氏は、コルクについては何も語らない。
イジイジしながら聞いている私は、質問時間が終わりそうになった時、
我慢ならず、主催者側という立場も忘れて、飛び出してしまっていた。
このコルクたちを並べ、質問せずには居られなかった。

100224_25

するとフーバーさん、さほど表情をは変わらず、

『コルクは醸造家にとって永遠の課題であり、
私は最上のものを使っている』

と言った。

100224_26

そこから開示されていくデータには、再度驚かされる事になった。

[To Be Continued…]

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